日本経済新聞が開催した『家計と資産セミナ―』の内容が、WEBで掲載されていました。

三菱UFJ信託銀行のトラストファイナンシャルプランナー、灰谷健司さんが講師として話されたものです。

『争続を防ぐ気配りと感謝の遺言』というテーマの内容です。

争族対策のための遺言とは・・・非常に参考になる内容でしたので、原文のまま紹介させていただきます。

日本経済新聞社は16日、「ニッポン金融力会議」プロジェクトの一環として家計と資産セミナーを開いた。「相続を“争族”にしないために」をテーマに三菱UFJ信託銀行のトラストファイナンシャルプランナー、灰谷健司氏が「自宅を継ぐ時がもめやすい。争いを避けるために専門家に相談して遺言を書いた方がいい」などと語った。

■円満な財産分割は節税になる

――家族でも相続で争うケースが増えている。

「家庭裁判所への相談件数は10年前に比べ倍増した。ただ、家裁を訪れる前にもめている家庭はもっと多いだろう。財産が少ない人こそ遺族の間で分けづらく、なかでも不動産を分割する際にトラブルになりやすい。一般的に不動産が財産の半分を占める。特に自宅は分け方が難しい」

――争いが起きて面倒なことは。

遺言がないと相続人全員が集まり遺産分割協議を開いて全員が合意する必要があり、合意まで相続財産を使えない。一方で相続発生後、10カ月以内に相続税の申告・納付が必要。協議がまとまらないと相続人が自分の預貯金から相続税を納めなければならない。小規模宅地の特例など相続税を軽減する制度が使えない場合もある。円満な財産分割は相続税の節税になる」

――相続人が苦労しないためには何が必要か。

「亡くなった人の預貯金を使えずに葬儀費用などが不足すると困る。相続人を受取人にして生命保険に入ったり、事前に指定された受取人が簡単な手続きでお金を受け取れる信託銀行の商品を利用したりするのがいい」

「自宅を共有で相続するのは避けるべきだ。代替わりで共有者数が増えると、話し合いが難しくなる。もめごとを防ぐには、例えば兄が自宅を継ぐなら弟には借金してでもお金を渡した方がいい。親の介護により寄与分があると思う人も多いが、仮に裁判になっても認められるかわからない。親が生前に介護の事情などを考慮して、遺産の分け方について遺言を書くことが必要だ」

■万一のために遺言書を

――円満な相続を実現するために考えることは。

「遺産分割、納税資金の準備、相続税の軽減と、3つの対策が欠かせない。縁起が悪いと言って遺言を書かない人も多いが、生前に書くのが遺言だ。家族のことを考えて生命保険に入るのと同じで、万一の時のためのもの。家族に書きたがらない人がいるなら、金融機関で老後資金の運用の相談に行こうと誘い、相続の話を切り出してみよう」

「トラブルを避けるには、遺言で相続人の遺留分を侵害しないよう内容に配慮する必要がある。法律に詳しくないなら、弁護士、税理士、信託銀行など専門家と相談しながら書くことが重要だ。無料の相談会などを利用するのも一手だ」

「遺言には誰に何を相続させるかだけでなく、家族に対する感謝の気持ちも添えてほしい。完全に平等な財産分割は難しく、うまく分けたつもりでも不満を持つ人が出てくる。家族への感謝や分割に対する謝罪の気持ちが伝われば、不満が収まることが往々にしてある」
【日本経済新聞WEB版 2013/2/20 3:30】

いかがでしたでしょうか・・・

たしかに・・・争族の防止には、遺言を遺しておくことが賢明でしょう。

遺言書により、遺産分割はスムーズに円滑に取り進めることができるでしょう・・・

問題は、円満です。

上記の文末にもありましたが、全てに平等な分割は難しいでしょうから、遺言書に自分の気持ちを添えておくことは、とても・・・重要かと思います。

最近は、エンディングノートが流行ってきています。

自分の思い出や友人関係、財産の所在、葬儀の希望、子供への思い、等々を書き記せるようになっています。

自分の率直な思いを伝えられるように遺されれば・・・いいのかなと感じています。

遺言で・・・円滑な手続まではできます。

円満には・・・思いを伝える努力が必要となるのではないでしょうか・・・

円滑と円満のお話しになってしまいましたが、遺言が遺されていない場合は、相続人間で話し合いをしたうえで、遺産分割協議を結ばなければなりません。

相続人全員が合意すれば、その分け方は民法の定める法定相続分など・・・何の関係もありません。

全くの話し合いで決めていくわけですから、往々にして相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内)までに間に合わないときもあります。

そうなると、被相続人の預貯金を始めとした金融資産にも手をつけられません。

さらに、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減も利用できません。

特例の適用を受ければ・・・相続税はかからなかった・・・しかし、遺産分割協議がまとまらないために、相続税をはらうこととなった。

さらには、被相続人の預貯金は使えずに、自分の預貯金から・・・支払った・・・

このような未分割リスクともいうべき現象を招く恐れもでてきます。

相続税の基礎控除の減額は、大方、決まってまいりました。

今後は、遺言は遺しておくべきと感じています。

できれば・・・自分の思いも託してみたら・・・いかがでしょうか・・・



2.遺言の方式

遺言の方式には大きく分けてⅠ普通方式とⅡ特別方式とに分かれます。

Ⅰ普通方式はさらに、①自筆証書遺言方式、②公正証書遺言方式、③秘密証書遺言に分かれます。

①自筆証書遺言とは、遺言者が遺言全文、日付、氏名を自署し、印を押す方式です。

②公正証書遺言とは、公証人が作成する方式です。遺言者が外国にいる場合は、日本国領事が公証人の職務を行い、作成します。

③秘密証書遺言とは、遺言者が遺言書に署名し印を押し(遺言者の署名以外の部分は、自書でなくてもよく、他人に書いてもらっても、ワープロで打ってもかまいません)、その遺言書を封入して遺言書に押した印と同じ印で封印したうえ、証人二人の立会いのうえ公証人に提出して、それが自分の遺言書であること、自筆でないときは、遺言の内容を書いた者の氏名と住所を公証人に申述して行う方式です。実際にはほとんど用いられていないのが現状です。

Ⅱ特別方式は遺言者が重病で死亡が迫っているときとか、伝染病などで一般社会と隔絶した場所にいるとかの理由で普通の方式ができない場合に認められる簡便な方式です。
実際に問題となるのは死亡危急時遺言(臨終遺言)ですが、死亡危急死遺言とは、次の様な遺言となります。

①危急時遺言
病気などのため客観的に死亡が危急に迫った場合、口頭で遺言することが認められています。この場合は、①証人3人以上の立会いのもとで、②その1人に遺言の趣旨を口頭で述べ、③その証人がこれを筆記し、④遺言者と他の証人に読み聞かせ、⑤各証人が筆記の正確なことを承認した後署名押印します。遺言者は署名も押印もいりません。
この方式によった場合には、遺言の日から二〇日以内に家庭裁判所の確認をえなければ効力を生じません。
また、証人についても条件があり、一定の人は証人になれません。
緊急事態ですから証人の印は拇印でかまいません。

3.方式を守っていない由比銀の効力

以上の方式に従わない遺言は、法律上の効力が認められません。日付の記載のない自筆証書遺言や、テープによる遺言、臨終の際に相続人だけに口頭で述べたことなどは、いずれも法律上無効です。そのようなものは、偽造・変造のおそれがあったり歪曲して伝えられる危険が有ったりするので、強い効力を持たせることが出来なくなります。
しかし、相続人が死者の意思を尊重することは何ら差し支えありませんから、方式を守っていない遺言であっても、それが遺言者の意思と認められる以上は、それによって遺産分割の協議をすることができます。

以上、本日は『遺言の方式』について、お話させていただきました。

次回も、『遺言の方式Ⅱ』について、お話させていただきます。