さて、今回は相続税の財産評価の内、『金融資産の評価①』についてお話させて頂きます。

■金融資産

(1)預貯金
 
預貯金は、課税時期における預け入れ残高に、税引き後の既経過利子の額を加算した金額により評価します。
 
既経過利子の額とは、課税時期で解約するとした場合に受け取るべき利息をいい、実際にはこれに20%の源泉所得税が課されるため、これを控除した額を預貯金の元本に加算するのです。
 
要するに預貯金の評価額は、課税時期にその預貯金を中途解約した場合の元利金の手取り額というわけです。
 
ただし普通預金や通知預金のように、既経過利子の額が少額なものについては、課税時期の預入れ残高により評価します。

以上いずれもリーズナブルなルールといえましょう。
 
預貯金には、むろん郵便局の定額貯金が含まれます。

さらに形の上では有価証券に分類されていますが、事実上の定期預金ともいえる貸付信託も、中途解約手取り額の評価(買取割引額を算入)と考えてもよいものと思われます。

(2)一般の有価証券
 
①利付公社債
 
利付公社債の評価は、その発行価格(券面金額ではありません。通常発行価格は、券面金額100円に対して99円と異なった額になっています)に、税引後の既経過利子の額を加算したものとなります。実務上は、券面額100円当たりの金額という単価ベースで算出します。
 
ただし、利付債は確定利付きの債権であるため、金利の変動により流通価格が日々変動しています。

したがって、これらの市場価格が把握できる場合で、その市場価格が発行価格よりも低いときは、市場価格をベースにこれに税引き後既経過利子を加算した額で評価します。
 
②割引債
 
割引発行の公社債の評価も、考え方は上記利付債と同様です。

ただし既経過利子の計算部分を、券面金額と発行価格の差額である『償還差益』を基に行うだけです。

すなわち『発行価格+既経過償還差益の額』で評価するわけです。
 
ただし、この割引債の市場価格が把握でき、かつそれが上記の評価額を下回っている場合には、その市場価格で評価します(割引債の市場価格は、既経過償還差益を折り込んで形成されています)。
 
③投資信託
 
投資信託の受益証券は換金性が高く、また投資している株式等の価額を基として、毎日の時価額が基準価額として日経新聞などに掲載されています。
 
したがって、投資信託の受益証券は、課税時期におけるこの基準価額により評価します(実務上は、これらの投資信託を取り扱った証券会社等の金融機関から基準価格を教えてもらっているようです)。


以上、今回は『金融資産の評価①』についてお話させていただきました。