定年を迎えて、これからのリタイアメントプランニングを考えることとなった場合、退職金の運用をどうするか・・・は、大きな、かつ、重要なテーマとなってきます。

日々の生活費は年金で・・・ある程度の節約をして余裕ができたら温泉旅行へ行ってみる・・・時には、京都で歴史を感じながらおいしい料理に舌鼓する・・・やっぱり元気なうちに豪華客船で船旅は経験したい・・・でも若いころからの夢だったハーレーに乗りたいなどなど・・・夢の実現もかなえたいものです。

退職金をもらうと、銀行等から資産運用の提案攻めとなるでしょう・・・

投資信託は・・・終身保険は・・・などなど・・・

資産運用の商品を抱えている会社等は、当人の夢であるとか生活の価値観などは、さておいて金融商品の販売に全力を注いできます。

その昔、住宅の営業をしていた私も、住宅ロ-ンの返済の負担率は、さておき銀行が貸してくれるんだから安心なんですよ・・・と言ってました。

それは、まだお子さんのいない奥さんの収入の合算が前提でした・・・これからの子育てで奥さんの今の収入は堅持できますか・・・などと聞いたことはありませんでした。

銀行が融資してくれればOKなんです・・・契約をいただければOKなんです・・・自分に責任はないのです・・・と、思ってました。

逆に、変動金利を前提として、収入合算でやっとローンの審査がおりるケースで、これからの子育てで住宅ローンの支払は厳しくなるリスクが高いから貯金してからがいいですとアドバイスをした場合・・・これを上司に報告すれば・・・『おまえは馬鹿か・・』と言われるだけでしょう。

このように、売るべき商品を与えられた営業員は、あの手この手のセールストークを駆使して・・・とにかく売るのです。

ときには、その人のためになっていることも、もちろんありますし、あまりその人のためにならないこともあるでしょう。

今日の日本経済新聞WEB版に、保険コンサルタント後田亨さんの『銀行が勧める退職金運用 断った人に学ぶ3カ条』というコラムが掲載されていました。

退職金の運用について提案を受けた場合の判断としての参考になると思いましすので、原文のまま、ご紹介させていただきます。

「当面、何もしないことにしました。いまの自分には向いていないですから」。先日、退職金が銀行に振り込まれた60歳の男性Aさんは、まとまったお金をどう運用すべきか考えた結果、こう決断しました。それを聞いた私も「それでいいでしょう」と同意しました。銀行から勧められた保険への加入や投資信託の購入を断った理由に納得できたからです。

銀行からの提案は2つありました。一つは「一時払い終身保険」。一生涯の死亡保障があるので、相続対策などに利用されることもある保険です。ただ一般には、数年後の中途解約金が払い込み保険料を上回ることに着眼し、貯蓄代わりに提案されることが多いものです。

Aさんは「(金利が高かった)昔と状況が違うのは分かっているけど、貯蓄性に納得がいかなかった」そうです。確かに私が提案書を見せてもらったところ、加入後3年以内に解約すると元本割れし、10年後の解約金の払い戻し率は104%強でした。私も「終身保険などは基本的に国債などで運用していますから、Aさん自身で直接国債を買ってもいいのでは? 死亡保障にもお金がかかるぶん貯蓄性が下がるのではないか、という見方も必要でしょう」とお話ししました。

もう一つの提案は、海外債券で運用する「毎月決算型」の投資信託です。「毎月の分配金が年金の上乗せになるし、債券の値上がり益も見込める人気商品」と勧められたものの、「仕組みがよく理解できなかった」ため見送ったそうです。勧められたパンフレットによると、購入時に3%超、運用期間中に1.7%超の手数料がかかります。人気商品なのは、高い手数料収入が見込める金融機関が販売に力を入れているせいかもしれません。

Aさんは「その後も銀行からは『支店長が挨拶に伺いたい』などと電話がある。でも、自分は何度も足を運ばれたりすると、何か契約しないとまずいかなと思ってしまう方なので『来ないでくれ』と言い続けている(笑)」とも話していました。

そして、1人で過ごす時間が増えるなか「そもそも昔ほどお金を使わなくなった自分がいる」ことにも気付き、「物価が急上昇でもしない限り『運用』を急ぐ理由はない。少しずつ勉強してみよう」と現時点での結論が出たそうです。

Aさんの話から学べることは、

(1)納得がいかない買い物はしない

(2)自分を知る

(3)結論を急がない

・・・の3点でしょう。

まず、銀行が勧めた商品については、お金の殖え方や商品の仕組みへの疑問から契約を見送っています。実際、仕組みが分かりづらい金融商品はたいていハズレです。「よく分からないものは購入しない」という方針は、ずっと貫いてほしいと思います。

次に「継続訪問などに弱い」というご自身の弱点を自覚していることも重要でしょう。確かに金融機関の人と面談を繰り返すうちに「情報だけもらって何もしないのは気まずい」といった感覚を持ってしまう方は少なくないようです。ただし、そんな感覚は先方が勧める商品の価値を判断する際、邪魔になるはずです。Aさんは過去の経験から学ばれたのだと思います。

最後に、結論を急ぐ必要がないことも自明でしょう。まとまったお金を金融商品の購入に向けるという提案は、商機を逃したくない売り手の都合でなされている、という認識でいいはずだからです。

私はAさんにこの先ずっと「何もしない」ことをお勧めしたいと思っているわけではありません。運用は、できないよりできた方がいいに違いありません。それでも今回の結論の出し方は正しかったと思います。特に「いまの自分には向いていない」という言葉には、消費者が金融商品の売り手と向き合う前に自分自身と向き合ってみることの大切さを教えられた気がしています。
【日本経済新聞WEB版2013/1/11 7:00】

いかがでしたでしょうか・・・

要は、焦りは禁物・・・、自分の気持ちに素直に・・・といったところでしょうか・・

何か、運用しなければならない・・・と思い込むことは、止めた方がよさそうです・・・

判断に悩む時は、ぜひ、FPにご相談ください。

公正中立な立場でアドバイスさせていただけるはずです。

株高もあがって・・ある意味で悩みが多くなったというお話も耳にします。

まさに・・・相談するのは・・・『今でしょう・・・』


本日は、『遺言で撤回を明示しなくても、撤回したとみなされる場合』について、お話させていただきます。

1 遺言で撤回を明示しなくても、撤回したとみなされる場合

遺言の撤回は、遺言の方式(前回のお話の内容)によることとされていますが、民法は次の四つの場合には、撤回の遺言がなくても遺言の撤回があったものとして扱うこととされています。

①後の遺言で前の遺言内容に抵触する遺言をしたとき(民法1023条1項)
②遺言をした後にその遺言内容に抵触する法律行為をしたとき(民法1023条2項)
③遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条前段)
④遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条後段)

民法がこのような規定を定めたのには、こうした事実があれば遺言者には撤回の意思があると認められることから、このように扱うことこそが遺言者の最終意思にかなうと考えられることによるからです。

次回は、上記①~④の場合のそれぞれの詳細の内容について、お話させていただきます。