昨日の日経WEBに、この相続増税において保険の活用は、資産防衛として有効であるか否かの記事が掲載されていました。

非常に興味深い内容でしたので、一部、抜粋のうえ、ご紹介させていただきます。

相続時の保険金の取り扱いについては、かつて優遇措置が大幅にある時期も存在していました。

その前後のタイミングでは、保険の活用は相続対策を考える上でまさにハズレのない、王道中の王道ともいえる手段となっていたといえます。

しかし、時代が移り変わるにつれて、特例的な取り扱いは何かと向かい風を受けるようになります。

そして、課税強化のために法律の改正などが行われる、ということの繰り返しが起こるのがこれまでの常でした。

そうなると、それまでは「常識」だった手法が、その後にはすっかり「非常識」となってしまうようなケースも出てきます。

せっかくの対策が、時代の流れに合わずに不適切となってしまったために、かえってトラブルを呼び込みかねないような場合もあるのです。

そういった意味では、相続対策に保険の活用を取り入れるにあたっては、常に情報をアップデートしながら、綿密に対処することが求められているようにも思います。

相続の際には、預金を引き継いだとき、不動産の名義をもらったとき、保険金や保険金を受け取る権利の形で受け取ったときなど、それぞれの財産の受け取り方ごとに法律上や税金上の取扱いが異なるケースが出てきます。

そのなかで、受け取る財産が保険の形を取ったときに特徴的となる機能は、大きく分類すれば次の4つに集約されると考えてもよいかもしれません。

(1)「資産の圧縮」の機能
  → 相続税の計算のうえでの評価が下がる
(2)「非課税枠の利用」の機能
  → 一定の額までは課税されない
(3)「受取人の指定」の機能
  → 誰のものか決めておけば、話し合いには左右されない
(4)「現金の創出」の機能
  → まとまったキャッシュの形で受け取ることができる

これらの4つの機能のうち、(1)「資産の圧縮」については、時間変化の影響を受けやすく、保険の機能としてはもっとも揺らぎやすい部分だといえるでしょう。

先ほども述べましたが、課税の軽減につながりそうな目立ったところが、それぞれの時代に応じてバッサリと斬られる流れとなることもあるからです。

例えば、現在では「生命保険契約に関する権利」(将来、保険金を受け取ることができる権利)を評価するのに、その時点で解約したらいくらの価値になるのか、という「解約返戻金」をベースに計算する方法が取られています。

しかし、この解約返戻金、いまでこそコンピューターが助けてくれるので算定も容易でしょうが、昔は支払い済みの保険料などを、コンピューターで一元化して管理しているというわけでもありませんでした。

ですから、仮に解約返戻金を試算したいと思っても、大変な手間が必要となって難しい……といった状況も存在していたのです。

そこで、解約返戻金の把握ができないと何かと不便も多いことから、当時の相続税法の「旧26条」という条文のなかで、いちいち複雑な計算をしなくても、簡便に数字が算出できるような一定の計算式を設けるという手当てがなされていた時代があったのです。

この旧式の計算方法は、10年ほど前の時代にもまだ残っていました。

しかし、その頃までには保険の商品も多様化し、ある程度まで柔軟な商品設計ができるような時代に入っていたのです。

そのため、昔のままの計算式を当てはめると非常に有利な評価となる、つまり実際の価値よりもかなり低い評価となって相続を乗り切ることができるような、そんな保険商品が登場してくるようになっていました。

これらの商品を普通に利用すれば、あえてリスクの高い複雑なスキームなどに挑戦しなくても、単純にお金を保険の形に変えるだけで相続時の評価が大きく下がる、という現象が比較的簡単に起こりえたのです。

また、そこまで時代をさかのぼらなくても、さらに最近の2011年4月に入るまでの一定の時期には、相続税法の「旧24条」という条文に基づく優遇があった時期もあります。

これが改正されるまでは、特定の年金の形で受け取る場合の保険金評価を、相続時にはなんと最大80%オフにまで圧縮させることができる、という取り扱いまで存在していました。

しかし、このような評価上の優遇は、たとえその当時はセーフの標準的な手法だったとしても、時代が変われば取り扱いが変わり、プランが根底から崩れてしまう恐れもあります。

実際に、上記の2つを利用して流行した手法も、それぞれの前提となる法律がすでに改正となったために、いまではもうそのまま効果を発揮することはなくなってしまいました。

このように、「資産の圧縮」の機能は、時代の変化に対してどうしても弱い部分があります。

後日の法改正によって、土台ごとひっくり返るというリスクがつきものであるとも言えるかもしれません。

相続の場合、実際に遺産の評価をすることになるのは本人が亡くなった後ですから、現在は非常に有効な手段であっても、将来死亡したときにルールが変わっていればもはや効果は期待できないのです。

次に、(2)「非課税枠の利用」についてはどうでしょうか。

まず前提として、相続税には、課税を免除されることができる一定の基礎控除というものがあります。

たとえば現行では遺産が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」に達するまでは非課税ですし、改正後も枠が小さくなるとはいえ、「3000万円+600万円×法定相続人の数」までは非課税、という取り扱いは残る予定です。

そして実は、この基礎控除とは別に、相続税の対象になる生命保険金や損害保険金については、さらに非課税となる限度額が特別に設けられています。

これは、預金など他の金融資産では設定されていないものですから、保険の場合に特有のメリットといってよいでしょう。

相続税の対象になる保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

この保険金の非課税限度額については、11年度の民主党時代の税制改正大綱の中でいったん縮小路線が打ち出されます。

「算定の基礎となる法定相続人の範囲を縮減します」という方向性が明文化され、本来なら相続人が3人いれば、前述の計算式に照らして「500万円×3」まで非課税だった控除額について、この「×3」の中にカウントできる数に一定の条件を付ける案が打ち出されたのです。

結果として相続人が3人いたとしても「×2」や「×1」に、あるいは場合によっては「×0」となるように減らしましょう、という流れがあったというわけです。

こうした流れは、昨年のいわゆる「社会保障と税の一体改革」の法案まで引き継がれ、国会での審議を通過すればいよいよ成立か……という段階まで来ていました。

しかし、最終的な成立までは見送られていたため、今度の安倍政権下での税制改正の大綱の中で、この保険金の非課税枠の縮小の話が継続して入ってくるのかどうか、というのはひとつの注目ポイントでした。

幸いなことに、この保険金の非課税枠の縮小の話は、今回の税制改正大綱には登場していません。

ですから結論としては、相続のタイミングに保険を使うことで生じる「非課税枠の利用」という機能は、いまだに有効であるということです。

この枠を超えるまでは、保険金を受け取っても遺産としての課税対象にはなってきません。

このあたり、少なくとも現時点では、実践的に活用できる余地がまだまだあるといえるでしょう。

ただし、過去に何度か非課税枠の見直しが検討されていたということだけは事実ですから、その話が再燃してくるのかどうか、そのあたりは今後も慎重に見極めていく必要があるかもしれません。
【日本経済新聞WEB版2013/2/12 7:00】

以上の内容の記事でした。

今回は、『受取人の指定』と『現金の創出』には、触れておりませんでした。

次回の記事で、説明されるとの事です。

今回のテーマである(1)『資産の圧縮』の効果については、本文にもありましたが生命保険を使った相続財産評価上の軽減効果の図れる条文は、ことごとく改正されてきています。

相続税法に限らず、法人税法でも、一部の保険商品で、全額損金扱いされていた保険料が半額までしか損金扱いされないなどの節税効果のあるものの改正が行われています。

相続税の財産評価額を圧縮するという節税効果は薄れてきていると言えるでしょう。

むしろ、相続対策での生命保険の有効性は、本来の保険の目的とする何かあった時の保障、すなわち、リスクマネジメントにあるでしょう。

相続税の納税資金にも代償分割の資金にも使えます。

節税の目的ではなく、何かあった時に助かる・・・まさに保険の原点に戻って考えることでしょう。

生命保険の非課税枠は、本文の通り、今回の税制改正大綱で改正案が盛り込まれず・・・良かったというところでしょう。

ただし、いつ、改正がされてもおかしくありませんので、同非課税枠がないものとした前提で考える必要もあるかもしれません。

税制改正に合わせて、新たな商品を開発し、それに対し税制改正で対応する。

いたちごっこの感もありますが、適時、その流れをキャッチしていくことこそが、資産防衛に、繋がっていくでしょう・・・


本日は、『離婚訴訟中の相続』に関してのお話をさせていただきます。

1.離婚訴訟中の妻でも相続はできるか

①死亡時に婚姻関係があれば相続人

民法は『被相続人の配偶者は常に相続人となる』(八九〇条)としています。

ここにいう配偶者とは、法律上有効な婚姻、すなわち、民法七三九条にいう婚姻届をすませた配偶者をさします。

いったん婚姻届を提出すれば、離婚するまでの間は、夫婦仲が悪くても、別居中でも離婚すべく話合いの最中でも、配偶者であり、相続人です。離婚調停や裁判は、相手方が死亡すると自動的に終了するので、夫死亡後の離婚はありえず、離婚調停中・離婚裁判中の妻も相続人になります。

ですから、配偶者と離婚するつもりで財産を相続させたくない場合、離婚の手続きをはじめると同時に、配偶者以外の者に財産を相続させる旨および配偶者を廃除する旨遺言しておかねばなりません。

また、相続は被相続人の死亡時に開始しますから(民法八八二条)、夫の死亡後に旧性に戻った妻でも、その後再婚した妻でも、夫の相続人です。

②離婚してしまうと相続できない。

逆にいったん離婚届を提出してしまえば、相続人ではありません。したがって、離婚した前妻は相続できません。

また、最近、夫が借りた金について妻に請求されるのを避けるために、形式的に離婚届を提出するケースがままありますが、この場合も相続人ではなくなります。

もちろん、借金だけを相続しても仕方がありませんが、もし財産があった場合には、真実は離婚する意思のなかったことを理由にしても離婚の無効を認めないのが現在の裁判例ですから、やはり相続できません。

何らかの事情により形式的に離婚する場合には、このことを十分考慮し、遺言する配慮も必要です。

③内縁の妻、内縁の夫には相続権はない。

結婚式を挙げ、親族も近所の人も皆夫婦として認めていても、婚姻届を提出していない内縁の配偶者には相続権はありません。

ただし、相続人が誰もいない場合には、特別縁故者として財産の分与を家庭裁判所に申し立てることにより、財産の全部または一部を受ける途があります。

なお、一連の社会立法においては、遺族給付について、内縁の配偶者を法律上の配偶者と区別せずに、受給資格を与えて保護しています(労働基準法七九条・同施行規則四二条、船員法九三条・同施行規則六三条、船員保険法一条、厚生年金保険法三条二項、国家公務員等共済組合法二条一項、国家公務員災害補償法一六条一項、地方公務員等共済組合法二条一項・地方公務員災害補償法三二条等。)

これらの内縁配偶者などに財産を承継させるには、その旨遺言しておかねばなりません。

しかし、内縁配偶者については、結婚の実態があるのですから、婚姻届は形式だけだなどと考えずに、婚姻届を提出しておくことが、万一の場合のトラブルを解消する最後の方法です。

以上、『離婚訴訟中の相続』について、お話させていただきました。

次回以降は、『遺言』についてを、何回かに分けてお話させていただきます。