今日の日経WEB版に税務署の海外財産の把握に関する記事が掲載されていました。

贈与税の課税漏れを防止するための措置のようです。

日経WEB版から一部抜粋のうえ、ご紹介させていただきます。

「納税者が国外財産の申告漏れをしないよう、先生方も十分指導してほしい」

東京国税局は現在、管内の税務署を通じて税理士への要請を続けている。

2月1日から贈与税の確定申告が始まり、16日には所得税の確定申告が始まるこの時期、国外財産の申告に言及するのは強い関心を抱く証拠だ。

「ザイメイに国外預金口座の記載があるのに利子の申告がない場合が比較的目立つ」と指摘するのはある税務署員。ザイメイとは「財産債務明細書」のことで、比較的高所得者に提出が義務付けられる保有財産の申告制度だ。

外国金融機関の日本国外の店舗に預金口座があり、現地で利子を外貨で受け取り、日本で源泉徴収(天引き)されない場合は確定申告をする必要がある。日本人が運用などで得た所得も、得た国や地域にかかわらず原則、他の所得と合わせて申告しなければならない。一方、同じ外貨預金でも国内支店に口座があり、利子が源泉徴収される場合は、国内預金の利子と同様に20%(所得税と住民税の合計、復興所得税を除く)の源泉分離課税だけですむ。

こうした基本的な知識すら「あまり知られていない」(元特別国税調査官で税理士の岡田俊明氏)。

そのため海外に持つ財産の所得税や相続税の申告漏れが増えている。

国税庁によると所得税の1件当たりの申告漏れ金額は約840万円だが、海外と取引をする人に限るとほぼ1.8倍の約1480万円。相続税でも国外財産1件当たりの申告漏れ金額は約6480万円に達する。現状を受け国税庁では国外財産保有者を「重点的に調査する」としている。

では、国外財産の申告漏れや脱税を把握するために当局は何を見るのか。

 米国に住む子どもへの送金理由は何ですか」

神奈川県在住の医師、笹島道雄さん(55、仮名)は最近、税務調査で執拗に問われた。笹島さんの長男と長女は米国に留学しており、学費や生活費などとして2人の米国口座に毎月100万円を超えるお金を送金している。税務署員はその事実を把握し「子どもへの贈与ではないか」と疑った。だが、笹島さんは実際にそれぐらい費用がかかることを資料を示して説明。税務署員はしぶしぶ納得した。

「所得や資産が多い人の税務調査は国外とのお金のやりとりがきっかけになる」。医師など高所得者の事情に詳しい税理士の本川国雄さんは語る。

税務署が国外とのお金のやり取りを把握しているのは「国外送金等調書」制度があるからだ。1回当たり100万円超の国内金融機関への入金、国外金融機関への送金がある場合、金額、目的などを金融機関から提出させる。海外から多額の入金がある場合には無申告の国外財産があると見て、税務署は「お尋ね」と呼ぶ質問文書を納税者に送付し、申告を促している。

■5000万円超で調書

ただ、国外送金等調書だけでは「海外へ出たお金がその後どうなったかわからない」(相続税に詳しい税理士法人JPコンサルタンツの小林登代表税理士)。また海外に住む間に蓄積し、現地で預けられたままの資産も「国内に送金されない限り把握が難しい」(元仙台国税局長で国際税務に詳しい税理士の川田剛氏)。

そこで国外財産そのものをつかむ新たな仕組みも導入された。13年末保有分から求められる国外財産調書だ。今年の年末に5000万円を超す国外財産がある人に、種類、数量、価額などを申告させる。当初は米国債など国内金融機関で購入した国外発行体の証券も申告対象に含まれ「資産家から不満が出ていた」(大和証券ウェルスマネジメント部長の藤田満氏)が、13年度税制改正でその要件は除かれた。とはいえ税務当局はその分を国内財産対象の財産債務明細書の提出などを求め、カバーする方針。「財産把握が強化されることに違いはない」(相続税に精通する税理士の阿保秋声氏)という。

もっとも、税務当局による国民の国外財産把握の動きは、日本だけのことではない。米国など先進各国は08年のリーマン・ショック前後から躍起だ。

その極めつきといえるのが米国が今後適用を本格化する国外財産把握制度、FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)だ。米国人の国外口座の情報提供を米国以外の金融機関に義務付けるもので、米国に進出する日本の金融機関もその対象になる。これにより米国人は国籍を離脱しない限り「世界のどこにいても財産を把握される」(川田氏)。

■外国籍でも相続税

無論、米国のケースは対岸の火事ではない。日本でも海外資産に対する相続税、贈与税の課税強化が進んでいる。例えば、今回の税制改正で4月から被相続人が国内に居住していれば、相続人が日本国籍を持たなくても課税されることになった。従来は日本国籍を持たない場合、あるいは被相続人、相続人がともに5年を超えて国外に住んでいる場合は、国外財産に課税されることはなかった。

富裕層の間で子や孫が意図的に国籍を離脱し、租税回避する動きが見られ、これを防ぐ狙いがあるようだ。

とはいえ資産防衛という意味で、個人が国外財産を持つ必要性は一段と高まっている。税務当局の課税・監視強化の動きは注視していく必要があるだろう。
【日本経済新聞WEB 2013/2/10 7:00】

相続税増税路線は、納税義務者の要件にも波及してきそうです。

もともとは、国籍にかかわらず、海外に住所を有する者が国外財産を相続や遺贈または贈与により取得した場合は、課税対象外だったものが、日本国籍を有する海外居住者は課税対象(あげる人ともらう人の5年間の国外居住用要件等の細かい規定はありまが・・・)
とされるような改正もされています。

国外への財産移転による、贈与税や相続税の課税逃れの防止に本格的に乗り出してきた感じがします。

日本に限らずに、あらゆる国では、国際間取引から生じるタックスシェルターに目を光らせているようです・・・

来年には、株式等の優遇税制もなくなり、10%から20%となってきます。

日本版ISAも、最近になって、良く耳にしたり、目にしたりするようになってきました。

日本の富裕層への課税強化が・・・脱日本とならないか・・・

どうなることでしょうか・・・


本日は、相続がおきた時の保証債務の扱いについて、お話させていただきます。

1.通常の保証債務は相続されます。

例えば、友人が銀行から金1000万円を借りるに際し保証人になった場合などのような、1回限りで金額の確定している保証債務は相続されることとなります。

この時、相続人は保証債務には気がつかないことが多いので、次のような相続の承認・放棄の熟慮期間がいつから始まるのかが争われた例があります。

すなわち、相続開始後、3カ月以内に、相続放棄をするか限定承認をするかの手続きをしないと、単純承認といって被相続人の全ての財産と債務を継承しますので、保証人となっていた事に気づかずに3カ月を経過してしまった場合のケースで、最高裁は次の判決を出しています。

相続の承認・放棄の熟慮期間はいつから始まるかが争われた事件で、最高裁は、死んだ親族の財産、借金の有無を調べることが困難な状況にあり、財産、借金がまったくないと信じるに相当な理由があると認められるときには、死亡で法律上の相続人となったときからではなく、財産、借金があることを相続人が知った時から起算すべきだとしています。

本日は、通常の保証債務のお話をさせていただきました。

次回は、信用保証についてお話させていただきます。