今回は、『遺産分割』に関します民法上の規定を、お話させて頂きます。

【遺産分割】

(1)相続放棄等

相続は自動承認の形をとっています。

すなわち相続人は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続の放棄または限定承認をしない限り、相続を単純承認したことになります。

単純承認(限定承認でないという意味)をした場合には、被相続人の権利義務を承認したことになります。

したがって、相続財産よりも相続債務の方が多い場合等には、上記の期間内に家庭裁判所に対して相続放棄の手続きを行うことができるわけです。

放棄した者は、初めから相続人でないものとされます。

すると、次順位の者が相続人に浮上します。

その結果、相続人が大借金を残したことことが明らかな場合には、第3順位までを含めた相続人が全員放棄の手続きをしないと、誰かがとんでもない貧乏くじを引くことになりますから、注意が必要です。

(2)遺産分割

遺産を配分する方法には優先順位があります。

まず遺言があればこれに従います。

2番目、遺言がなければ相続人全員で協議して決めます。(法定相続分は参考程度)。

この協議が整わなければ家庭裁判所に持ち込んで調停や審判に委ねます。

この場合の判断の基準は法定相続分となります。

上記の2番目が遺産分割です。

一般の相続の7~8割以上がこれによっているものと思われます。(遺言はまだ少数派です。)

なお遺言があっても、法定相続人や受遺者の全員が、これ以外の配分の方法による遺産分割に合意した場合には、実務上それが認められています。

民法等のどこにもそのような規定はないのですが、「無理に遺言を強制してもしかたない」ということのようです。(税法もOK)。

分割協議が成立すれば、通常は遺産分割協議書にその内容を記載して相続人全員が署(記)名捺印します。

逆に1人でも反対者がいれば、協議分割は不成立となります。

この場合は家庭裁判所での調停、審判となります。

こうなると家族の絆にひびが入ってしまいます。

このようなことが予想される場合には、あらかじめ遺言を書いておくべきでしょう。

なお相続税の申告の際には必ず税務署に提出します。

また不動産を相続登記する場合には、遺産分割協議書が登記原因証書になるため、実印の押印が必要となります。

以上、今回は民法の『遺産分割』についてお話させていただきました。

相続が発生した時に、相続税が生じる、生じないに関わらず、相続人の円満な遺産分割が最重要と考えます。

したがいまして、円満な遺産分割のための対策が相続発生前の相続対策の最優先事項と考えます。

それには、先ず、ご所有財産、特に不動産の棚卸調査(財産診断)を基にした財産の現状分析を行う事が大切です。

ご所有の不動産の内には、駅前の事業に適した土地もあれば、優良な住宅団地の中で住宅には申し分ないですが事業(アパート他)には適さない土地や調整区域で売却や活用に制限がかかる土地など、多種多彩な特徴があります。

納税が発生する時には、納税用の資金の準備をどうするのか?

納税資金の方法の見通しがたったら、各相続人への分割をどの様に配分するのかの検討が必要となります。

相続が発生してから、ご所有財産を見直すのではなく、あらかじめ、現状分析を行った上で、納税方法、分割方法、、節税方法、や保険の活用等を検討しておく事が重要となります。