以前のブログでは、武富士事件と納税義務者の要件について触れさせていただきました。

海外居住者が海外財産を、贈与もしくは相続で取得した場合の取扱いの変遷についてでした。

今回は、平成17年に税務訴訟となった航空機リースに係る件について簡単に触れさせていただきます。

この航空機リースとは、民法上の任意組合が出資者を募りその出資額とノンリコースローンで航空機を取得し、航空会社にリースをしたリース料からローンや諸費用を差し引いた金額のうち出資額に応じた分を、その出資者が不動産収入として受け取るというというものです。

このポイントは何といっても、不動産収入となっていることです。

任意組合で航空機という不動産を所有する・・・

これに出資した出資者は、出資額に応じた航空機を所有しているという解釈です。

出資といった観点で観ると、その出資したものが不動産といった代表的なものはJリートでしょう・・・

ただ、Jリートの場合は、その不動産は信託受益権となっていますので、信託受益権という配当を受け取れる権利に出資しているということになってきます。

ここが、組合を組成して不動産を所有することと大きな違いです。

もっとも、最近は組合で不動産を所有して、賃料相当分を配当として受け取るといった商品もよく見かけます。

信託受益権とする手間や経費がかからないといった手軽さは、あるかもしれません。

この、不動産収入として受け取る・・・配当として受け取る・・・何が違うかといいますと・・・

不動産収入として受け取った場合、その所得は不動産所得・・・

配当として受け取った場合。その所得は雑所得・・・

不動産所得と雑所得の大きな違いは・・・

不動産所得は、減価償却ができます、そして損益通算ができます、さらに相続発生時には不動産の評価方法が適用されます・・・すなわち、土地は路線価、建物は固定資産税評価額ということになってきます。

所得税では減価償却ができる・・・相続税では不動産としての財産評価が適用される。

これは、金融商品として所有するよりは、節税効果は高くなってくるでしょう。

雑所得は、減価償却もなければ、損益通算もできません、相続発生時には、金融商品として相続発生時の取引相場価格での評価となるでしょう・・・

雑所得扱いでは、投資対象が不動産というだけで税務上の不動産を所有していることによる節税効果は得ることは出来ないこととなります。

この所得区分が、時に、税務訴訟となっていくわけです。

上段の航空機リース事件で申し上げますと・・・

任意組合の取得した航空機のリース料を不動産収入とするということは、航空機の減価償却が経費として差し引かれることとなります。

このケースの場合、リース期間は、確か6年・・・6年で航空機を減価償却・・・結果、大きな不動産所得の赤字が生じることとなります。

この赤字が、例えば事業所得や給与所得で所得税率50%の高所得者の方にとっては、大きな節税効果となって表れてきます。

逆にいうと、不動産所得以外の所得が少ない人にとっては、メリットがないこととなってきます。

そして、6年経過した後、その航空機を売却してローンの返済、出資額の弁済に充てるわけです。

この売却時に、当然ながら短期で減価償却を行ってきた分、多額の譲渡益がでてきます。

ただ、6年経過後ですから長期譲渡所得で2分の1の課税価格となってきます。

総体的にみると、かなりのキャッシュが手許に残るという試算もされています。

この、航空機リースのスキームについて、課税庁側は、任意組合を民法上の組合契約ではなく利益配当契約として、更正等の処分を行いました。

不動産所得としては、認めません。

減価償却も、損益通算も否認されることとなりました。代わりに譲渡の所得は発生しないこととなります。

この、処分にかんして納税者側は、訴訟をおこし、結果は納税者側の勝となりました。

不動産所得が、裁判では、認められたわけです。

その理由としては、第一には任意組合を否定するだけの要件がなかったということでしょうか・・・

うまくいけば、手許に相応のキャッシュが残る反面、航空機の相場によっては損をする可能背もありといったところが、sの理由にあるようです。

必ずしも、得するだけとはいえず、節税できる半面、リスクもある。

ということが、利益配当契約と言いきれなかったということだと解釈しています。

この結果を受けて、課税庁側は、所得税の改正をしました。

任意組合からの所得は、損益通算対象外と・・・

これで、同様の節税を目的とした行為は、できなくなってしまいます。

結局、法律で定めてしまえば、その法律に基づいて課税されることとなりますので、節税が大きくできる商品には注意が必要かもしれません。

租税回避行為とその徴収のための税制改正は、まさにイタチごっこのようです・・・

毎年の税制改正大綱には、目が離せません・・・