日経WEB版(2月19日)に、相続税時代における生命保険の機能の有効性についての特集記事が掲載されていました。

以前、その特集の前半部分を紹介させていただいておりました。

今回は、その後半を、一部、抜粋のうえ、ご紹介させていただきます。

将来の相続への対策を考える上で、保険の活用は王道とされてきました。それは、資産が保険の形を取ることで、相続時に特有の機能を果たすことが期待できたからです。しかし、今後に予測される相続税の課税強化というトレンドに対しても、相続対策のために保険を活用することは、そのまま資産防衛術として有効な手段となりうるのでしょうか。

その答えを探って行く過程で、相続時に受け取る財産が保険の形を取っていたときに特徴的だと考えられる機能として、以下の4つの分類をとりあげました。


(1)「資産の圧縮」の機能
→ 相続税の計算のうえでの評価が下がる
(2)「非課税枠の利用」の機能
→ 一定の額までは課税されない
(3)「受取人の指定」の機能
 → 誰のものか決めておけば、話し合いには左右されない
(4)「現金の創出」の機能
 → まとまったキャッシュの形で受け取ることができる

今回は後編として、(3)「受取人の指定」と(4)「現金の創出」について情報を整理していきたいと思います。

一般に、形式と内容の両方が有効である遺言書がしっかりと準備されていない限り、故人の遺産について、複数いる相続人のひとりだけが自由な配分で受け取るようなことはできません。なぜなら、相続されるべき故人の遺産については、相続人全員の話し合いによってその分け方を決めなければならないという大原則があるからです。

しかし、この大原則に従わなくてもよい可能性が出てくるのが、保険を活用して、(3)の「受取人の指定」の機能を働かせた場合です。あらかじめ受け取らせたい人間を決めて保険の契約をしておけば、まるでお金に名札が付けられているかのように、行き先の決まった保険金が準備できるようになることがあるのです。

死亡保険金の場合、人が亡くなったことを理由に受け取ることになる財産であるためか、どうしても他の遺産と混同したイメージを持ってしまいがちです。この背景には、保険金の受け取りが「相続税」の課税対象となってくる場合があることも、誤認に拍車をかけている点があるのかもしれません。なんとなく、保険金は故人の遺産に含まれていて、みんなで遺産分けの話し合いをするときには、死亡保険金についても自分がもらった遺産としてカウントして考えないとダメなんだろうな……といった印象を持ってしまいがちです。


しかし、もしかしたらそれは誤解かもしれません。保険金を請求するのは、あくまで「受取人」としての立場に基づくもので、「相続人」として行っているわけではありません。このため、仮に保険金を請求したとしても、それは相続されるべき故人の遺産の中には含まれておらず、遺産分けの話し合いの対象にもなってこない場合があるのです。

このような考え方には裏付けがきちんと存在し、昭和40年に出された最高裁の判例などに基づいたものです。一定の条件を満たしている場合には、受取人が保険金を請求する権利については「固有財産となり、被保険者(兼保険契約者)の遺産より離脱しているものといわねばならない」という考え方がとられるケースが存在しています。

このように、特定の財産について、遺産分けの話し合いの対象とならない「固有財産」の形として、受取人を指定することができるという機能は、ある種の保険に特有なもので、他の預金や有価証券不動産などの財産にはそのままの形では備わっていない性質であるといってもよいでしょう。

さらに、保険の形であれば、契約をした後からでも受取人の変更をすることが可能です。そのあたりの柔軟性も、ひとつの特色といえるでしょう。これを活用して、生命保険の受け取りの配分を「貢献度」に応じて毎年変更することにしたら、息子やその嫁がみんな急に優しくなった……などという笑い話のような事例もあるそうです。また、さきほどの固有財産としての機能の応用で、特定の相続人に最低保障された「遺留分」を考える際にも有効な部分が出てくる場合もありますが、これについてはまた別途でとりあげる機会があればと思います。

ただし、このような「受取人の指定」の機能を活用するにあたっては、注意しなければならない点も少なくはありません。保険にさえ入れば、どんな形でもイコールで「固有財産」となって、遺産に含まれなくなるわけではないのです。掛け方によっては、やはり遺産の一部となってしまい、相続人全員での話し合いの対象となってくるケースなども当然に出てきますので、加入の際には十分な検討が求められるでしょう。

それでは最後に、4つ目である「現金の創出」の機能についても簡単に見ていきたいと思います。保険本来の働きともいえるようなシンプルな機能であるかもしれませんが、相続の際には大きな役割を果たすこともあります。

相続の後のタイミングでは、まとまった額の現金が必要になってくる機会が少なからず想定されます。連想しやすいものだと、相続税がかかる場合は、所定の期間内に納税資金を確保しなければなりません。また、相続税の課税とは関係なく、相続人間での遺産分けのバランスを取るのに資金が必要となったりすることがあります。さらに、名義変更の手続きになどに費用が必要となることもあるでしょう。

そして、これらの資金の需要を、保険によって生まれたキャッシュが解決してくれることがあるのです。当たり前の話ではあるのですが、やはり何と言っても、保険を活用することの大きな利点は、まとまった額の現金が入るという点にあるといえるのではないでしょうか。

とはいえ、入ってくる保険金そのものが相続税の課税対象となるケースも出てくるために、これがすなわち相続税を減らすことには直結しない部分もあります。しかし、負担が多少増えたとしても、しっかり期限内に払うための納税の資金として、あるいは遺産分けでもめそうな場合に使える解決の資金として、現金が確実に準備できるようになります。こうした資金が、結果として家を守り、家族関係を守ることにつながっていくわけですから、意味のある機能だと思います。

また、保険というものは原則として支払い事由が起こるまでは「現金の創出」がされないわけですが、これを逆手にとって活用できるような場面もあるでしょう。例えば、若い孫に生前贈与をするにしても、すぐに使える現金の形で渡してしまうと、使い道は自由とはいえ、ついつい無駄遣いをしてしまうかもしれません。

しかし、孫に贈与したあとの現金を保険料として、自分に保険を掛けてもらって、孫に受取人になってもらっておけば、支払い事由が起こる、つまり、自分が亡くなるまでは、孫は自由に保険金を手にすることができないのです。途中で解約して現金化ができないわけではありませんが、これで無駄遣いの心配は減るかもしれません。さらに、孫が自分のお金で保険を掛けていたという実体がきちんと成立すれば、孫が将来手にするであろうこの保険金については、非課税にまではならないものの、ケースによっては相続税の対象とはなってこない可能性も考えられるかもしれません。

(1)の「資産の圧縮」の機能については、時間軸の変化に弱い部分もあり、現行の法制度でOKなものが、将来も絶対安泰であるということにはならないでしょう。また、(2)の「非課税枠の利用」については、今回の改正では影響は受けない見込みなので、まだ大丈夫であるといえそうですが、これも長期的には、よく情勢を見極めていく必要があるかもしれません。

そして、(3)「受取人の指定」と(4)「現金の創出」については、時代の変化の風を受けにくい、保険の本来の働きに由来するものだと思います。大きな構造変化がない限り、もちろん絶対に不変であるとまではいえませんが、おそらくこの機能が完全に無効となるようなことは考えにくいでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、ただ単純に保険に加入するだけで、相続時にこれらの機能の発動が期待できるようになるわけではありません。それぞれ、誰が保険料を払っているのか、誰に保険が掛けられているのか、誰が保険金の受取人となっているのかなどで、課税の関係も、財産としての法律上の取り扱いも、まったく異なってくる可能性が出てきます。導入を実践していくにあたっては、くれぐれも個人の資産と保険との関係に強いファイナンシャルプランナーや税理士など、専門家からの助言を利用されることをお勧めします。
【日本経済新聞WEB版2013/2/19 7:00】

いかがしたでしょうか・・・?

今回も非常に参考になる記事でしたので、かなりの量を抜粋させていただきました。

今回の『受取人の指定』と『現金の創出』こそが、本来の保険としての意味のある機能だと思います。

前回の『資産の圧縮』や『非課税枠の利用』は、税法における保険の優遇措置をりようして節税効果を狙うものとしたものです。

このような保険の税法上の優遇措置は、年を追うごとに税制改制によってそのメリットは少なくなっています。

他の金融資産に比べ、優遇され過ぎとの国税庁の思いが強いようです。

個人的には、今回の税制改正では『非課税』の対象となる相続人の制限は見送られましたが、生命保険本来の何かあったときの死亡保障の側面から考えると『非課税』の制限は施行して欲しくないと思います。

もっとも、相続税の基礎控除額を超える相続財産を承継する非同居親族には『非課税枠』を与える必要はないとの判断があるかもしれません。

せめて、『未成年者』、『障害者』、『同居親族』に限ろうと・・・

相続に備えた生命保険の意義は、税法の優遇措置を利用することもありますが、これは、相続税を減少させたいという節税効果を狙うものであり、税制改正が行われるとその意義は薄れることとなります。

相続対策にとっての優先順位は、①円滑な遺産分割、②納税対策、③節税対策、と言われています。

税制改正によって節税対策の効果が薄れたとしても、円滑な遺産分割や納税対策のとっては、生命保険の活用は有効な手段となりえそうです。

保険は、本来は、節税のためのものではなく、万が一のときの保障のために相互補助するものでした。

生命保険の本来の原点の立ち戻って考えれば・・・

相続増税時代でも、保険は有効な相続対策手段ではないでしょうか・・・


本日は、前回に続いて『遺言の内容」の続きについて、お話させていただきます。

1 遺贈について、相続人以外のものに財産を譲ろうとするとき

遺贈とは、遺言によって財産を無償で譲与することをいいます。贈与に似ているようですが、遺贈の場合は、相続税として納税することとなり、贈与税より税金がずっと安くなるなどの違いがあります。このことから、相続人以外に財産を譲る場合には、遺贈によるのが良い選択でしょう。

①遺産の何割をあげるというような遺言を遺すことを包括遺贈といいます。
相続人以外の人に対して、『遺産の3割をあげる」とか、『遺産の4分の1を与える』等のように割合で示したものを包括遺贈といいます。

包括遺贈は、その内容から、遺言によって相続人を作り出すこととなります。すなわち、包括受遺者(遺言より財産をもらう人)は『相続人と同一の権利義務を有する』ので、被相続人の債務も承継し、それがいやなら、限定承認や放棄をすることも自由です。この場合の期間や手続きなどは相続の限定承認や放棄と同様の決まりとなります。
また、具体的に財産を取得するためには、相続人間と遺産分割協議を行う必要が有ります。
法定相続人以外の人(たとえば内縁の妻、長男の妻、子供があるときの親・兄弟など)に財産を取得させたいときはこの方法か特定遺贈によることが宜しいでしょう。

相続人以外のある人に全財産をあげるという包括遺贈も原則として有効です。相続人から遺留分減殺請求がなされることがあるだけですが、不倫な関係を維持するためになされた場合などは、公序良俗違反として無効とされることがあります。

以上、『遺言の内容』について、お話させていただきました。

次回も引き続き、『遺言の内容』について、お話させていただきます。