自民・公明両党が24日にまとめる2013年度与党税制改正大綱の原案が、まとまってきました。

概要は、以下の通りとなるようです。

【個人向け】

①所得税の最高税率45%にUP、課税所得「4000万円超」に適用。(15年分所得から)

②相続税の最高税率55%にUP、基礎控除額は4割縮小(15年1月~)

③相続する居住用宅地の評価額を80%減額できる特例措置の対象面積の上限を「330平方メートル」に拡大(15年1月~)

④相続人が未成年の場合の相続税の控除額を拡大し、『20歳になるまでの年数×10万円』とする(15年1月~)

⑤住宅ローン減税を17年末まで4年延長。減税額は最大年40万円に拡大。

⑥被災者向けの住宅ローン減税も4年延長し、減税額は最大年60万円に拡大。

【法人向け】

①給与支給額を5%以上増加させた場合、増加額の10%を法人税から控除(13年度から3年間)

②雇用者数を1人増すごとに20万円を法人税から控除できる制度を「40万円」に拡充(13年度~)

③中小企業の交際費の損金算入の特例を拡大。年800万円まで全額損金算入可能に(13年度~)

④中小企業の事業を後継者に引き継ぐ際の優遇税制を拡充(15年1月~)

概要は、概ね、上記のとおりとなるようです。

相続税でいえば、都市部の地価の高い場所に土地や建物を所有している住民に影響が強く及ぼされることとなることから、居住用の宅地の80%減額の特例に幅を持たせたようです。

現状は、240㎡まで適用できた特例が、330㎡まで適用可能となるようです。

また、2世帯住宅の場合、この特例を使うためには、建物の内部で2世帯のの居住空間がつながっている必要がありましたが、この要件も13年末で撤廃されるようです。

また法人税では、給与支給額のUPや雇用を増やした場合に、減額ができるものとするようです。

新たな雇用や、賃金UPを目的としたもののようです。

いずれにしましても、増税です・・・

都心部に、土地や建物をご所有している方は、くれぐれも、ご注意ください。


本日は、『特別受益①』について、お話させていただきます。

1.特別受益の意義

①特別受益の意義

民法は、共同相続人間の平等を図るため、相続人に対して遺贈及び一定の生前贈与といった財産分与と見られるものがなされている場合に、その遺贈等を『特別受益』と呼び、これを遺産分割時に精算する規定を設けています。

すなわち、遺産分割に際し、相続財産に特別受益である生前贈与を加えたもの(遺贈は相続財産に含まれているので加算する必要はない)を相続財産とみなし(みなし相続財産)、これを基礎として各相続人の相続分(一定の相続分)を算定し、特別受益を受けた者については、この一定の相続分から特別受益分を控除し、その残額をもってその特別受益者が現実に受くべき相続分(具体的相続分)とするとしています。

このように、特別受益を相続分算定の基礎に算入する計算上の扱いを、『持戻し』と称していますが、特別受益の付与は相続分の前渡しの趣旨で行われることが多く、したがって持戻しをすることが一般的には被相続人の意思に推測されることもこの制度の根拠とされています。


②超過収益

特別受益が『一応の相続分』を超過する場合については、超過分を返還する必要はなく、ただその相続において新たに財産を取得することはできないとされています。

このようにすることが、多額の財産を与えた被相続人の意思解釈に合致するとともに、超過分につき返還すべきであると、特別受益者に不測の損害を与え、かつ法律関係を徒に煩雑にするからです。ただし、超過特別受益が他の相続人の遺留分を侵害するときは、その限度で遺留分減殺請求の対象となります。

ところで、超過特別受益者がいる場合に、超過特別受益者を除く相続人間ではどのように相続分を算定するか、逆にいえば超過受益によって減少する分をどのように分担するかにつきましては、大別すれば、①超過受益者は不存在とみなして他の相続人間で改めて相続分の算定をすべしとする見解の判例と②超過受益者を除き、他の相続人間で全相続人の相続分の割合で相続分の算定をすべしとする見解の判例があり、①と②で対立しています。

例えば、相続財産が6000万円、相続人は妻甲と嫡出子乙丙丁の4名で、乙は1800万円の生前贈与を受けており、丁は1200万円の遺贈を受けているとします。

この場合、みなし相続財産は相続財産6000万円に1800万円の生前贈与を受けた7800万円となり、一応の相続分は甲が3900万円、丙丁は各1500万円となり、丁についてはここから1200万円の遺贈を控除した残額300万円が具体的相続分となります。

これに対し、②の計算方法によれば(細かく言えばこの中でも3種の計算方法がありますが、ここでは代表的な見解に従います)、当初の計算による甲、丙、丁の具体的相続分、すなわち、甲3900万円、丙1300万円、丁100万円の比率によって、1200万円の遺贈を控除した現実の相続財産4800万円を分配することになり、その結果各自の具体的相続分は、甲が3532万755円、丙が1177万3585円、丁が90万5660円ということになります。


③持戻免除の意思表示

被相続人が、持ち戻しをしなくてよいといういわゆる持戻免除の意思表示をした場合には、持戻しをしなくてもかまわないとされています。

持戻制度は、前記の通り、持戻しをすることが被相続人の通常の意思にも適うということがその根拠とされているからです。

遺贈についての持戻免除の意思表示は遺贈が要式行為である関係から遺言によってなされる必要がありますが、生前贈与についての持戻免除の意思表意は、特別の方式は必要ありません。

贈与と同時でなくてもよく、また明示たると黙示たるとを問わないと解されています。

したがって、生前贈与による特別受益者としましては、持戻しを始める前に、持戻免除の意思表示があったと解し得ないかどうかを一応検討しておく必要があります。

例えば、共同相続人の一人に贈与がなされているにもかかわらず、この贈与に言及することになく遺言で相続分の指定をしているような場合には、持戻免除の意思表示を認めることができるものとした判例があります。

なお、持戻しを免除された特別受益が他の相続人の遺留分を侵害している場合につきましては、持戻免除の意思表示は当然に無効となると解する見解もありますが、多数説は、単に遺留分減殺請求権を与えるにとどまると解しています。

以上、『特別受益①』について、お話させていただきました。