住宅ローン減税案が自公で合意に至ったようです。

2013年末で期限の切れる住宅ローン減税を4年間延長し、所得税などの納税額から控除できる金額を、現行の2倍『年間で最大40万円』にすることで合意したようです。

4000万円までのローン残高の最大1%分を納税額から減らせる仕組みとなります。

減税期間は最大10年間で、控除額は最大400万円となります。

対象者は、消費税率が8%に上がる14年4月から、17年末までに入居した方となります。

また、省エネ性能に優れているなどの長期優良住宅については、控除額を、年間で最大50万円(10年間で最大500万円)に引き上げるそうです。

所得税などの納税額が少なく、住宅ローン減税の恩恵を十分に受けられない中低所得者に対する現金の給付期間は4年間とするようです。

一方で、自公民3党は、昨日夜、比較的所得の高い人を対象にした所得税や相続税の課税強化について協議したようですが、本日に決着を持ち越したようです。

いよいよ、税制改正大綱の全容が見えてきました。

消費税率UPに伴って、住宅取得者への配慮をしています。

これで、駆け込み需要は、和らぐことでしょう。

また、消費税のUPに伴って、富裕層への課税強化を図ろうとしています。

日経WEB版に富裕層への課税強化についてのアンケート結果が報じられていました。

『富裕層を主なターゲットにした所得税や相続税の増税について電子版読者は62.9%が「妥当」との回答でした。財政再建に向けて増税が避けられないときに、いかに公正を担保するのか。大衆増税である消費税率引き上げを実施するからには、やはり富裕層の負担増はセットとの見方が多いようです。』 【日経WEB 2013/1/22 6:00】

以下、賛否両論のコメントは次の通り記載されていました。

『増税賛成の読者のコメントは大きく3つに大別されます。

1つは伝統的な「持てるものが負担すべきだ」という考え方です。

○カネ持ちはもっと負担すべきだ(59歳、男性)

○富裕層は一般人がいるから成り立っている(49歳、男性)

2番目は貧富の差が近年、拡大していることへの対応として累進強化が必要だというもの。

○格差是正のための所得再分配を考える時期に来ている(71歳、男性)

○持てるものと持たざるものの差が開きすぎだ(40歳、女性)

最後は望ましい政策ではないが、やむを得ないというものです。

○プラス5%ならば微々たるもの(71歳、男性)

○消費増税を実現するため(65歳、男性)

「持てる人」に属すると思われる「やむを得ないが、税の使途を改善してほしい」(73歳、男性)という書き込みもありました。』 【日経WEB 2013/1/22 6:00】


また、反対意見のコメントは次の通り記載されていました。

『○国際的に高い水準。資産流出が加速する(38歳、男性)

○個人のやる気をそぐ(54歳、男性)

○レーガン米大統領の富裕層減税は毀誉褒貶(ほうへん)があったが、カーター大統領時代のスタグフレーションからの脱却に成功した(58歳、男性)』
【日経WEB 2013/1/22 6:00】

などなどの意見が寄せられたようです。

概ね、約63%の方は、富裕層増税には、賛同との回答でした。

富裕層の海外移住を懸念する声もありますが、日本人の言語の問題や立地の問題から、欧米の富裕層のようにカリブ悔への島々への移住は難しいであろうとの意見もあります。

そう意味では、日本は、比較的に富裕層への増税は、行い易いとの意見もあります。

増税は、いた仕方ないとしても、北欧のように高い税金負担の代わりに、国民の生活が保障されているなどの安心感を与えてくれることが、非常に重要かと思います。


本日は、『相続財産の範囲と評価⑩』について、お話させていただきます。

1、相続財産の評価方法

①評価の重要性

遺産分割は、総遺産を具体的相続分に応じて分割するものですから、各相続人が分割によって得た遺産を換価すれば、具体的相続分と等しくなってはじめて各相続人の公平が図られます。

このため、全遺産の客観的価値(時価)を把握することが必要となります。

もっとも、当事者間の合意による遺産分割協議におきましては、遺産の評価額を明らかにせず分割することも可能ですし、遺産の客観的価値のみならず、主観的価値をも考慮して遺産の評価を行うことも許されます。

しかし、後日に紛争の余地を残さないためには、分割合意の前提として遺産の客観的価値を明らかにしておくことが必要となります。

また、遺産分割審判事件におきましては、相続分に応じた分割がされていることを明らかにするため、前提問題として、遺産の客観的価値を認定することが不可欠であり、これを怠った審判は違法となる裁判例があります。


②評価の資料

評価額につきまして当事者間に争いがあるような場合や、専門的知識、経験を有する者以外には算定が困難な場合は、不動産鑑定士(土地)や公認会計士(非上場会社の株式等の価額や営業権)等に鑑定してもらうことが原則となります。

この費用は、家事審判規則11条によりますと、家事審判、調停の証拠調べの費用は国庫の立て替えが原則とされていますが、実務の現状では、鑑定費用を含めて家事事件の手続費用は、当事者の予納が原則的になっていますので、鑑定費用を予納することが必要となります。

なお、固定資産税評価額、相続税評価額、地価公示価格、都道府県内地価調査価格に一定の倍率を乗じる方法によって、土地の時価を算定する便法もありますが、大雑把な目安としてはともかく客観性に乏しくなります。

したがいまして、当事者が上記の評価方法に合意している場合におきまして、遺産のほとんどが土地であり、現物分割するとしましても、調整金の授受が全く不要になるような場合には、このような便法によって評価することも可能であると思われます。


③評価の具体例

.不動産

不動産の正式な鑑定におきましては、不動産の再調達原価について減価修正を行って価格を決める原価法、多数の取引事例から事情補正及び時点修正をし、かつ地域要因の比較や個別的要因の比較を行って価格を求める比較法、不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の原価の総和を算出し、還元利回りで還元して価格を求める収益法の3方式があります。

この3方式を併用することによりまして、初めて、不動産の適正な価格を算定することが可能になるといわれています。

なお、調停において家庭裁判所調査官の調査結果を主として不動産の時価認定の資料とすることもあります。

その土地の評価方法を要約すれば、まず不動産を確定したうえで、東京都宅地建物取引業界発行の『東京都地価図都市計画図』(大阪府の場合は、大阪府宅地建物取引業協会発行『大阪府宅地価格地点図』)によって近接類似の基準地を選定し、その基準値の実勢価格を把握し、宅地条件の比較をし、画地条件による補正、時点による修正をして更地価格を算出します。

その後、権利関係による補正を行います。すなわち、比較法によって評価しています。また、建物については原価方式によって、評価しています。


.株式

上場株式は、取引相場が明らかであり、分割時に最も近接した時点での取引価格、あるいは近接の一定期間の平均額によって算定します。

非上場株式の場合は、商法上の株式買取請求における価格の算定や相続税賦課のための税務署の評価方法を参考としています。

前者は①純資産評価方式、②収益還元方式、③配当還元方式、④類似業種批准方式があるとされていますが、実務では、会社の実態に応じて各方式を組み合わせて評価しています。

後者は、当該相続人が同族株主以外の株主になる場合は相続した株式を配当還元方式で評価し、相続人が同族株主となる場合は会社を大中小と分け、それに応じて定められた各評価方式によるものです。

いずれの方法によるにせよ、取引や経理についての相当高度な知識経験がなければ的確な評価をすることは困難であり、専門家の鑑定が必要とされる場合が多いようです。


以上、『相続財産の範囲と評価⑩』について、お話させていただきました。

次回は、『特別受益①』についてを、お話させていただきます。