今日の読売新聞に、所得税・相続税の増税についての記事が掲載されていました。

自民・公明・民主の3党は、昨日、所得税・相続税の最高税率引き上げなどで合意に漕ぎつけたようです。

先の民主党政権時代に策定された税制改正大綱について、自民党は一部、慎重な姿勢を見せていたようですが、民主党が4割弱を占める参院での財政改正関連法案可決に向けて、自民党が民主党に大幅譲歩し、合意にいたったようです。

その内容は・・・

①所得税最高税率は45%で決着

公明党は、最高税率50%で主張していたようですが、民主党が主張していた45%で決着したようです。

ただし、45%が適用される所得の区分は決まっていないようです。

最大で約4.3万人が増税となる見通しのようです。


②相続増税

民主党勢県時代の税制改正大綱をそのまま反映して決着したようです。

相続増税について、自民党は慎重な考えを示していましたが、冒頭にお話しましたとおり、参院での決議を考慮して、自民党が大幅に譲歩したかたちとなったようです。

その内容は・・・

大きいのは葉基礎控除額の4割縮小です。

現状の基礎控除額5000万円+1000万円×法定相続人の数から3000万円+600万円×法定相続人の数に・・・4割減少となってきます。

現状では、亡くなった人の100人に4人しか課税対象となっていませんが、見直し後は、おおよそ6人となるような見込みとなっています。

地価の高い都市部では、実に20人を越えてくるだろうとの見方もあります。

自民党は、この都市部に20人との偏り方を懸念していたようです。

都市部に住宅をお持ちの方は、いままでは相続税なんか関係ないと思っていても、相続税の課税対象者となりうることが、予想されますので注意が必要です。

ここで、自民党は小規模住宅用地の特例(一定の要件を満たせば240㎡まで80%まで減額できる)の拡充や、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の拡大も検討しているようです。

また、最高税率は、55%に引き上げで決着したようです。

いよいよ、相続税の基礎控除額の4割縮小が導入されそうです。

これで、気をつけなければいけないのは、今まで、関係ないと思い込んでいた方たちも相続税の課税対象となりうることがありますので、まずは、相続税がかかるか否かを、疑って欲しいなと思います。

そして、配偶者の税額軽減や小規模住宅用地の特例などの相続税の特例は、申告期限までに遺産分割がまとまっていない財産については適用できません。

特例を適用すれば、相続税額は、かからないのだけれど、遺産分割がまとまってないがために、相続税がかかってしまうということが起こります。

もっとも、申告期限から3年以内に分割すれば、後追いで一部の特例は適用できますので、その時点で、更正の請求での還付を受けることはできますが・・・

それも、面倒ですから、理想は申告期限までに分割協議をまとめて特例は、必ず、受けておくことが、理想です。

他、無申告であると、特例は適用できません。

特例を遣うと、相続税は0円であっても、期限内申告書を提出していないと、特例が適用できずに相続税がかかってきてしまうことも考えられます。

くれぐれも、慎重に、気をつけて対応して欲しいなと思います・・・・



本日は、『相続財産の範囲と評価⑦』について、お話させていただきます。

1.代償財産

相続開始時から遺産分割時までに、遺産に含まれる建物等が焼失した場合の火災保険金や、相続人の1人が遺産中の物を処分した場合の対価(動産の即時取得が成立する場合や他の相続人が追認した場合)といった代償財産が、相続財産に含まれるかどうかは、問題である。含まれるとすれば、遺産分割手続で分割できるが、含まれないとすれば、民事訴訟手続に委ねざるを得ないようです。

代償財産が遺産分割の対象となるかについては、見解が分かれています。

①積極説

『相続財産に属する株式を、相続人が遺産分割前に勝手に処分したときは、その株式にかわり、同人に対する代償請求権が分割の対象となる』、『遺産たる土地と家屋のうち、土地が県の用地買収の対象となった場合には、遺産として相続の対象となるものは、右家屋と土地買収代金とであり、家屋等移転補償費(家屋の時価の約3倍)は、本件遺産分割により当該家屋を取得した相続人の所有となります。』

②消極説

『建物、部屋が相続開始後相手方により取り壊され、それによりその余の相続人が同人に対し損害賠償請求権、あるいは不当利得返還請求権を有するに至ったとしても、これらの債権は相続開始後生じた右相続人らの固有の債権であり、被相続人から承継された相続財産ということはできないから、協議あるいは調停による遺産分割に際し事実上清算するのは格別、審判において各相続人の具体的相続分を確定する上に考慮すべきでない』

裁判例は上記のように分かれていますが、積極説がやや優勢で、学説では積極説が通説のようです。

そして、積極説は、①遺産分割の制度趣旨は、全遺産を各相続人の個別的事情を考慮しながら、総合的、合目的に分配することにあります。

遺産から分離した財産がある場合には、本来の相続財産に代わる代償財産が存在する限り、これを遺産分割の対象とすることが制度趣旨に合致します。

②この代償財産の処理を民事訴訟に委ねざるを得ないとすると、当事者の負担も看過し難く、同一紛争を異なる手続で処理することになり妥当とはいえず、場合によっては、相続人間の具体的公平を損なうこととなる、ということを根拠にしています。

これは、すでに述べた『遺産からの収益』の場合の積極説ないしは折衷説とほぼ同様の理由です。

こうしてみると、同様に代償財産の把握(その前提としての遺産の把握)に困難が伴い、その内容に争いがあり、それを遺産分割手続で確定することが困難な事例は当然予想されます。

こうした場合『遺産からの収益』での折衷説と同様の考えが主張され、また裁判例でも採用されてくることが今後予想されます。

以上、『相続財産の範囲と評価⑦』について、お話させていただきました。

次回は、『相続財産の範囲と評価⑧』についてを、お話させていただきます。