日経新聞WEB版に相続税対策で有効な方法とされている生前贈与のトラブルに関する記事が掲載されていましたので、一部、抜粋のうえ、ご紹介させていただきます。

大切な資産を子孫に残すため、相続増税に対する防衛本能が働くのは、ある意味では自然の摂理といえるのかもしれません。ただ法律的な観点などから「これは避けた方がよいのでは……」と思う対策を目にするケースもしばしばあります。

1月に税制改正大綱が発表されて以来、相続税に関連する情報に関心が高まっているのは確かだと思います。金融機関のセミナー担当の方に話を聞くと、相続税関連のイベント開催の告知をすれば1日で定員が満席となってしまう状況も出ているようです。そうした中で今後の具体的な増税対策を検討する方も多いと思いますが、くれぐれも拙速は禁物です。

今回は一般的な相続税対策として紹介されることが多い内容を整理したうえで、その中でも争いやトラブルを生むリスクをはらむケースを取り上げたいと思います。

一般的に、相続税対策としてよく紹介される内容は、大まかに次の3つに分類できるでしょう。

(1)生前贈与をすることによって財産額を減らす
(2)相続税に関する各種の特例を利用できるようにする
(3)現金を不動産に変え、財産評価額等を減らす

もちろん、ほかにも方法はあると思いますが、この3つが一般的に相続対策として紹介されることが多いものです。ところが、これらの対策の中には、相続税の評価上のメリットだけを追い求めてしまうと法律の観点ではデメリットを生むことになってしまう場合があります。

(1)の代表例としては、110万円までの贈与税の暦年の非課税枠などを利用しながら、現金などを次世代や次々世代の子や孫に毎年移転していく方法などがあります。

(1)の「生前贈与をすることによって財産額を減らす」ことを狙ったケースで生じる可能性のあるトラブルを考えてみましょう。司法書士の実務では「100分の○○」といった割合の不動産持分について親子間での贈与を毎年繰り返されているケースをよく目にします。しかも、その贈与を受けているのが1人ではなく複数の子にわたっている場合が珍しくありません。

このような生前贈与の形態は、名義変更の前後に多少のコストはかかるものの、確かに相続される親の財産自体は減っていきます。そのため長期間にわたって贈与を続けていれば、将来生じるであろう相続税の負担を減らすことができるかもしれません。しかし親の死後、複数の子供の間でその不動産をどう分け、処分するのかについて当事者同士でもめるかもしれない……というリスクを考慮していない場合が少なくないのです。

お互い、なまじ名義の一部を持っている「所有者」同士となっているため、万一もめてしまうと後の処理は簡単ではありません。少々の相続税の額は抑えられるのかもしれませんが、共有している不動産をどう分けるかについての裁判を余儀なくされた結果、訴訟にかかる費用などがかえって高くつくような可能性が出てくる場合もあるでしょう。

このような例は不動産に限りません。例えば中小企業の社長が、保有している株式を生前に複数の親族に分散するケースでも同様に見られるリスクです。株式の場合、いったん争いが起これば最終的には会社経営そのものが存続の危険にさらされる致命傷になりかねません。安易な分散にはできるだけ慎重になるべきだと思います。

相続税対策といっても、財産を減らすという一点に重きを置きすぎてしまうと、その結果として生じる紛争や関係悪化などに大きなコストを払わざるを得ない結果になる可能性がどうしても否定できません。そうなれば、もはや取り返しの付かない代償となって、むしろ下手に対策をとらずにそのまま相続税を支払っていた方が大局的にはより多くの資産を残せた、ということにもなりかねません。こうした点にはくれぐれも注意する必要があるでしょう。
【日本経済新聞WEB版 2013/2/26 7:00】

いかがでしたでしょうか・・・

生前贈与においても遺言においても・・・遺産分割協議においても・・・

不動産を相続人間で『共有持分』で分割することは避けるべしと言われています。

まだ、子供たちの代では、その経緯や遺してくれた親の遺志をよく理解できているせいか・・・

大きくもめることは・・・少ないでしょう。

これが・・・孫、ひ孫の代までなってくると・・・

顔を観たこともない人と・・・共有者となることもあります。

そうなると・・・単純に権利の主張となり争うもととなりがちです。

いっそ、売却して持分に応じた換価分割しよう・・・と話がまとまった場合でも・・・

その売却を依頼する不動産業者や・・・売却価格で多くの共有者の同意を取り付けるのが困難となるときは、多々、あります。

もっとも、ひ孫の代まで、延々と共有の分割が続くと・・・共有者は優に二桁の数を超えてくるでしょう。

そうなると・・そもそも、売却するか、否かの話も纏まりにくいでしょう・・・

また、中小企業のオーナーの相続で問題なのは・・・相続対策としてその会社の株式を子供達に分散してしまうことでしょう。

誰が、その会社を承継するのかを決めて、円滑に承継者に経営権を譲れることを優先すべきでしょう。

株が分散してしまうと・・・後々の買い戻しで・・・結局は、その手間と費用負担で税金よりも高くつく結果となってしまうこともあるでしょう。

相続対策は・・・やはり、まずは分割、納税、そして節税と・・・その対策の全体像を描いてから、生前贈与や、不動産活用、生命保険の活用などの具体的策を練っていくべきでしょう。

まずは、自分の財産を調査、分析(現状分析)をし、全体の対策を練る・・・そして対策を実行する・・・

とにかく、現状分析の段階がとても重要です。

くれぐれも、この手順を踏んで・・・取り組んで頂くことを・・・お奨めします。



本日も、自筆証書遺言の注意点について、お話させていただきます。

1 自筆証書遺言の訂正方法

自筆証書遺言(秘密証書遺言も同様)の場合、遺言書の字句の加除訂正するにも一定の決まった方法によらねばなりません。

加除訂正するには、必ず、①変更した箇所に印を押したうえ、②その場所を指示して変更したことを付記し、③付記したあとの署名をします。印を押すだけでなく署名が必要とされる点に注意が必要です。

いずれにしても、訂正は面倒であることと汚くなるので、全文を新しく書き直す方がよろしいかと思います。

ただし、判例では、明白な誤記の訂正の場合は、訂正要件に反する部分があったとしても遺言は無効にならないとしたケースがあります。

とはいえ、のちのちに面倒なことが起きないように、まず下書きしてをしてから十分に検討のうえ、清書することをおすすめします。

以上、自筆証書遺言の訂正についての注意点についてお話させていただきました。

次回は、『遺言書の書き方のポイント』についてお話させていただきます。