昨日の日経WEB版に共有で分けた相続財産が、その後相続を重ねるごとに共有の所有者が増えてしまい、にっちもさっちにもいかなくなり、どうしようもなくなることから注意すべきという記事が掲載されていました。

特に不動産は、均等に切って簡単に分けられるというようなものではないですから、ついつい共有持分で均等に分けてしまいがちとなります。

とにかく、遺産分割協議を纏めるには手っとり早い手段となるでしょう。

ただし、その後の相続を重ねるごとに、共有からまた共有へ・・・

気がつくと共有持分での所有者が50人という話もあります。

そうなると・・もう大変です。

売るにしても、貸すにしても、有効活用するにしても・・・話がまとまりません。

このように、制約が多くなることから、一般的には共有での分割は止めるべしと言われています。

今日は、その共有による分割に係る記事を原文のまま紹介させていただきます。

相続した遺産について、ずっと後になってから「なんでこんな分け方をしてしまったんだろう」と後悔するようなケースがあります。とくに多いのが、土地や建物などの不動産の分け方に関してです。みんなで仲良く共有して引き継いだものの、その後の不動産の使い方などが「仲良く共有」という状態からは大きくかけ離れてしまい、実態に沿わなくなってしまうというようなことが少なからず起こっているように思います。

そもそも遺産分けの話し合いというものは、必ずしも合理的な判断が中心となって進むというばかりではありません。先のことはあまり見通さずに、その場その場の「とりあえず」や「なんとなく」といった曖昧な認識で、相続トラブルの先送りのような形でまとまってしまうケースも珍しくはないのです。

 例えば4人の兄弟姉妹が親の土地1筆を分けるような際に、誰かひとりだけに名義をまとめようとすると角が立つから、とりあえず文句が出ないように兄弟姉妹で均等に4分の1ずつ名義を入れておこう……などといった分け方が、往々にして起こりやすいということです。

しかし、1個のものを2人以上で所有しているという「共有」の状態は、当たり前の話ですが1人が単独で所有している場合とはまったく異なる制約を受けます。例えば不動産を単独で所有している場合には、そこを貸そうが売ろうが、基本的には所有者の自由に動かすことができるという前提があります。

ところが、不動産を「共有」している場合には、その物件を賃貸したり、逆に賃貸の契約を解除したりするためには、共有者の同意がないと手続きが進まない場合が出てきます。さらに、不動産の全部を売却したり、物理的な変更を加えたりしようとする場合には、共有している全員の同意を得なければならないのです。

長男「なあ姉ちゃん、例の、みんなの名義にしとるあの土地のことやねんけどな。亡くなったおやじがよく言ってたやろ、あそこはな、ゆくゆくは孫の誰かが商売にでも使うたらええ、って」
姉「お父さん、そんなこと言ってたかしらねぇ」
長男「それでな、うちの息子が勤めてる会社がな、どうもあのへんで駐車場の用地を探してるらしいんや。それが、けっこういい条件で借りてくれるっちゅう話でなあ」
姉「ふーん」
長男「姉ちゃんとこに迷惑はかけへんからよぉ、一応の共有者っちゅうことで、ちょっとハンコのひとつふたつばかり協力してくれへんか」
姉「……実はね、うちの娘の知り合いも、あそこを使いたいって話を持ってきてるのよ」
長男「えっ?」
姉「こっちのほうは倉庫に使いたいらしいんだけどね。信用のできる筋からの話みたいだから、私は私で前向きに進めていくつもりなんだけど」
長男「なに言うてんねん、そないに勝手なことされたら困るで! あそこはな、うちで使いたいんや。姉ちゃんたちは、おやじの相続の時にいったん仮で名義を預かってるだけなんや。そのへんはきちんとわかってくれよ」
姉「あんたこそ、なに勝手なこと言ってんのよ……」

共有状態の不動産は、利用や処分に大きな制約があるため、それが物件の有効活用の妨げとなってしまうことがあります。また、そうした法律上の制約とは別に、共有者に相続が発生するなどして、時間の経過とともに共有者の人数が増えてしまう可能性があることも考慮しなければなりません。
例えば父の遺産の土地名義を、兄弟姉妹で持ち分4分の1ずつ、4人で共有していたとしましょう。そして、兄弟姉妹のそれぞれに、妻や夫などの配偶者と子どもが2人ずついたとします。この場合、ひとり亡くなるごとに、その相続人として最大3人の共有者が新たに増える可能性があるということになります。

つまり、最初は親がひとりで持っていたものが、次は子どもたち4人の共有となって、さらに次の代には最大12人での共有となってしまう可能性すらあり得るということです。もちろん、共有者の人数が多くなればなるほど、何をするにしても同意を得るのがさらに困難になりますから、物件の活用や処分が難しくなる可能性がより高まるといえるでしょう。

さらに、不動産の共有状態は、公的な機関からの評価などにもマイナスの影響を与えるケースがあります。具体的には、相続税の納税のために不動産を「物納」する場合などが挙げられるでしょう。相続税については現金による納付が原則ですが、一定の条件が整っていればキャッシュではなく現物で納税することもできます。国に対して「相続税の代わりに、この土地を持っていってください」という手続きができる場合があるというわけです。

しかし、残念ながら誰かとの共有状態にある不動産は、その共有者が全員で申請をするのでもない限りは「管理処分不適格財産」とされ、物納することができないケースが出てきてしまいます。いくら共有とはいえ、不動産についての所有権には違いないのだから、せめてその持ち分相当の財産価値くらいは認めてくれても……と言いたいところなのですが、そういった制度にはなっていません。国のほうも、そんな他の共有者がいて処分しにくいようなややこしい状態の不動産を、わざわざいただかなくて結構です、という明確な基準を持っているということになります。

このように、不動産の共有状態というものは少なからぬデメリットが予測されます。かといって、いったん遺産分けの話し合いの決着がつき、正式に書面も作って共有の名義に変え、実態としてもその共有状態が何年も続いている……という場合には、その後に「やっぱり、別の分け方にすることにしました」というような「やり直し」を行うことも難しくなります。仮に書類上だけの話で名義を元に戻せたとしても、すでに事実としてみんなで共有して相続していたわけです。そのため、いまさら名義を別の形に変えてしまえばそれは「相続」ではなくて「贈与」でしょう、とみなされて、多額の贈与税が課税されてしまうような危険性も否定できません。

それでは、もはや相続後に共有状態を解消することはどうやっても無理な話なのか、というと必ずしもそうではありません。たとえ遺産分け自体はもう一度やり直すことができなかったとしても、共有状態の解消を可能にする方法はいくつか存在しています。次回は、そうした共有状態の解消の方法について触れていきたいと思います。
【日経WEB版2013/6/18 7:00】

いかがでしたでしょうか・・・

共有で不動産を分割すると、その後の対応は本当に難しいものとなってきます。

できるものであれば、共有での分割は避けるべく代償分割による遺産分割を考えたいものです。

そのためには、相続発生前の分割対策が非常に重要なこととなってきます。

相続発生前に、遺産分割の方法はじっくりと検討すべきでしょう・・・


本日は、『事業承継をサポートする特例』について、お話させていただきます。

2009年に経営承継円滑化法が施行されました。
過大な税負担のもと、事業承継が進まないケースが後を絶たないために、円滑な承継のサポートを目的としています。
この法で設けられたのが、相続税・贈与税の納税猶予制度です。
後継者が前経営者から相続によって株式を取得するときに、一定の要件を満たしていれば、発行済み議決権株式総数の3分の2までの部分について、課税価格の80%に対応する相続税額が猶予されることとなります。

この制度は、非上場の中小企業に適用されることとなります。
なお、この制度は、先代経営者の存命中に事業承継の計画を立てて、経済産業大臣の確認を得ることが求められます。
この後継者は先代経営者の親族でなければなりません。

相続税の申告期限から5年間、雇用の8割以上を確保しているなど、事業を継続していることが確認されれば納税が猶予される仕組みとなっています。
毎年1回、所定の報告書を提出してこの確認を受けることとなります。
その後も、納税猶予の対象となっている株式を継続して保有するなどすれば、猶予が継続されます。

贈与についても、、同様の制度があります。

これらの納税猶予制度によって、事業承継時の税コストの軽減を図ることができます。

早い段階から、事業承継のプランを立てて着実に実行することが重要言えるでしょう。

以上、『事業承継をサポートする特例』について、お話させていただきました。

次回は、『相続株式の会社への売却のケース』についてを、お話させていただきます。