どんなものでもお金を払う際には、その品物の価値と、価格を考えますよね。保険の場合も基本は同じです。しかし、保険や住宅ローンなどのように、一度に支払いをするのではなく、分割して支払いをしていくものの場合、価値と価格を見誤ることがあります。

 ある医療保険の例で検討してみましょう。年齢40歳の男性が、日額1万円の入院保障の得られる医療保険に加入すると月額7700円の保険料がかかります。月額7700円は少し高いなと思ったので、保険募集人にもう少し安いのはないですか、とたずねると、では、全く同じ保証内容で、4700円にできますが、いかがでしょうと言われました。全く同じ保険料なのに、こんなに保険料が違うことがあるでしょうか。

 この違いは、単に、7700円の場合は、60歳払い済みで終身保証なのに対し、4700円の場合は終身払いだということです。なんだ、それならあたりまえじゃないかと思われるかもしれません。でも、こういう比較をしないで、月額4700円なら負担が少ないから、という理由で終身払いを選ぶ人も結構いるのです。

 保険料総額は、60歳払い済みなら、7700円 x 12カ月 x  (60歳 – 40歳) = 184.8万円
        終身払いなら、   4700円 x 12カ月 x  (80歳 – 40歳) = 225.6万円

と、平均寿命の80歳まで生きた場合22%多い保険料を支払うことになります。80歳は平均寿命ですから、90歳まで生きる人も沢山います。

 もちろん、この比較からだけで、60歳払い済みを選ぶ方が良いという結論になる訳ではありません。最近は様々な保証の得られる新しい保険ができてきていますので、どのみち、途中で保険を見直すことになる、と考えるなら、当面でも保険料の安い保険に加入しておくという考え方もあるでしょう。

 しかし、少なくとも、保険を決める際には、総額保険料を確認することは忘れないでください。この例では、差額は40万円程度なので、それほどではないですが、保険によっては随分違った保険料総額になることもあります。

 もう一つ、保証内容の方はどうでしょうか。この保険の例で言えば、病気にかかって入院した場合、1日1万円の保証が得られます。では、この保険に加入した場合、どんな入院をした場合、保険料と見合う保証が得られるでしょう。最近はガンのような深刻な病気でも、10日の入院で手術をして退院というケースも多々見られます。そうすると、

  入院保障 1万円 x 10日 = 10万円
  手術費用 20万円 x 1回 = 20万円
  合計              30万円

 この保証内容で、入退院を繰り返して、約6回入院すると、60歳払い済みの場合の保険料相当額となります。
60歳まで、保険料相当額、月7700円(=9.24万円)で個人向け国債などを買い、1%(単利)の利息がついたとすると60歳までに、元本約185万円と 利息約20万円が得られますので、約205万円の資金ができます。

働いている間は、病気にかかっても、医療費より給与が減る、もしくは貰えなくなることの方が問題で、入院費用が心配になるのは老後のことが多いと思われます。60歳までに預貯金で200万円入院費用として確保するのと、医療保険で確保するのとどちらが良いか。

この辺まで、総額費用、あるいは総保証額で金額を計算して、その上でどう判断するか。
いつもこのくらいまで、全体像の確認をしてからお金の使い方の判断ができていれば、あとになってから考え直しても、後悔のない決断だったと言える判断になるのではないでしょうか。