昨日は、某出版社の出版記念セミナーに参加してきました。

2冊の本のセミナーでしたが、両方とも相続対策についてのセミナーでした。

一つのセミナーは、資産税専門の税理士の方のセミナーでした・・・

この先生は、同業の税理士の方に営業をしているそうです・・・

法人や個人の申告業務をメインにしている税理士の殆どのかたは、相続税は苦手と言われています・

全国で7万人近い税理士のかたがいるなかで、相続税の申告は、年間約5万2千件(平成24年)です。

年間に税理士一人に対し相続税の申告業務は1件にも及びません。

そして、相続税の税務調査の比率は、約23.5%で、そのうち、申告漏れの割合は81.6%にものぽるようです。

これは、慣れない税理士のかたの申告漏れが多いそうです。

その申告漏れとなってしまう原因は土地の評価というよりは、預貯金がそのほとんどの原因のようです。

相続税の申告に不慣れなことに拠る預貯金の把握のあいまいさによるもののようです。

全ての預貯金の通帳を過去7年間にさかのぼって、その入出金を確認しているか・・・

子供や孫の名義の預貯金が名義預金と認定されないか・・・

等々、その原因はさざまでしょう・・・

この講師の先生は、そんな相続税を得意としない税理士のかたが抱えているお客様の相続問題を一緒に解決していきましょうと営業活動をかけているそうです。

ある意味、セカンドオピニオンとして、相続対策を実践していくそうです。

会計事務所は、一定期間の業績の結果を適正に集計して財務諸表を作成し申告書を提出することを、その業務としています。

その経営の考え方は、職員にたいして、一つの申告書を何時間で処理したかを、大きな指標としています。

私も、1年半近くを会計事務所で勤務しましたが、毎日、お客様毎の仕事に費やした時間を記録することとなっていました。

月次の訪問で何時間、伝票入力で何時間、申告書作成で何時間、といったようにです。

相続対策というのは、相続が始まる前に、資産防衛のためのいろいろな策を施すものです・・・

会計事務所の体質は、毎月通って試算表をつくったりとか、申告書を作成して提出したりとか、等の役務の提供には胸をはって請求書を出せるのですが、将来の対策のために遺言書の作成や相続税のシミュレーション等のいわゆるコンサルタント業務的なものはサービス業務となってしまう場合が多いようです。

こうなってくると、目の前の売り上げに直結する申告業務等に傾注するほかなく、なかなか、相続対策等の生前のコンサルテイングは、その実行は厳しいものとなってきます。

もっとも、生命保険の代理店業務等を、業務にとりいれて成功報酬的な売り上げを定期的に上げられるようにすれば、コンサルティング業務もこなしていけるようになるやもしれませんが・・・

私が、以前、勤めていた会計事務所でけっこうな不動産を所有しているお客様を引き継いだことがあります。

賃貸アパートが4棟、賃貸マンションが1棟、駐車場が2カ所、クリニックモールが1棟、等々、賃料収入で年間4~5000万円程度の収入があります。

この収入から、水道光熱費や固定資産税、修繕費、ローンの元金と金利等をしはらっていかなければなりません。

賃貸物件のうち、深刻な問題がありました。

クリニックモール、全6室のうち、2室が空室でした・・・クリニックモールの空室は、本当に経営に響いてきます。

賃料が、月30~40万円・・・この空室は非常に痛いものとなってきます。

このお客様は、所得税対策として、不動産管理法人を設立して、家族を社員として給料を支払い所得分散し、各人の給与所得控除と超過累進税率の税率を下げるといった対策を行っていました。

そして、個人の所得税の申告書4人分(同族会社の社員)と不動産管理法人の申告書の引き継ぎを受けました。

その数値をみると・・・気になるのは手許にいくら残っているかです・・・

赤字ではないのは確実も、ローン(住宅と事業用)の支払いが大きく、決算書では元金の弁済は盛り込まれませんので、どうしても気になるので、仕方ない簡易なキャッシュフローの計算をしてみました。

何で気になったか…所得分散をすることによって、本来はお祖父ちゃんの大きな財布一つで管理されていたのが、色々な財布をつくって分散させたことにより、お金が実施にいくら残っているかの把握が難しくなっていました。

せめて年に1回は所得分散した金額を一つに集計して、実際にいくら手許にキャシュが残っているかを検証しないと、今後の賃貸物件の空室リスクの限界の見極めがつかないからです。

ただ、この業務は所長の指示は何もありません・・・業務時間中は、毎日の業務ごとの時間の報告義務があるためごまかすこともできません・・・

本当のことをいって作業をすれば、やらなくていいと言われかねません・・・

そうなると、自宅でのサービス業務・・・それでも気になって集計しました。

結果、手許の残金は、おおよそ400万円・・・といっても、申告書から導き出した数値ですから、社会保障料やある程度の保険料は負担済みの金額です。

その400万円で、生活に必要な食費や水道光熱費(自宅分)等を、賄えれば生活には困窮しません。

ただ、すこしでも、空室が増えてくると生活そのものが苦しくなりかねません・・・

手許残、400万円・・・これは心もとないです・・・

なにしろ・・・借金は2億円(自宅+事業)を超えているわけですから・・・

そして、前任者に質問をします・・・たとえば、住宅ローンが6000万円、さいたま市が本拠であるにもかかわらず、成田のお祖母ちゃんの実家の近くに建築している・・・そして定期的にさいたま市の本拠に通ってきている・・・前任者は?です・・・

建てた家は100坪で大手のハウスメーカー・・・?6000万円で建つわけがない・・・前任者は?です・・・

そうです・・・申告以外は興味がないのです・・・最も申告以外は評価対象外です。

そして、お客様に聞きました・・・なぜ、別宅を建てましたか?・・・お祖母ちゃんが高齢になって故郷の近くで住みたいよいうこととさいたま市の自宅は老朽化しており、ここは建て替えるよりは、将来の事業用の資産として活用したいとの意向でした・・・なるほどと思いながら、自宅はいくらかかりましたか、お話を聞く限り6000万円+αでは立たないと思いますが・・・1億円は優に超えています・・・なぜ、6000万円の借入金にしたのですか・・・手許に残るお金から支払える限度が6000万円でした・・・

結果、お客様本人は、当然に手許にに残るお金は、身をもって知っているわけですから、残り400万円を残して借りれるローンが6000万円だっということです。

やっと、いろいろなことが分かってきました・・・

自己資金4000万円は、われわれが管理していない別の口座から出している・・・ということは、まだ、別の大きな口座があるらしい・・・等々、

そして、何より、お客様本人は、空室のリスクをとても憂慮していることなど・・・

何も考えずにいたのは、会計顧問の担当者のみだったということ・・・もっとも、お客様は会計事務所に空室等の対策は期待しておりませんでしたので、会計指導だけしてくれればいいという感じでした。

これでは、そもそも論として・・・相続の対策には入っていけないでしょう・・・

昨日のセミナーの講師の先生は、相続増税に備えた対策として、基本的なものは次の3つをあげていました。

①生前贈与・・・②小規模宅地等の特例・・・③生命保険の活用・・・

よく耳にする基本的なものばかりです・・・

ただ、お話をきいていて、なるほどなと思ったのは、対策を考える際には、すべての財産を教えてもらうこと、相続税のシミュレーションを出してみること、そのうえで各対策を行ったうえでのメリット・デメリットを検証してすすめていくそうです。

相続税がさほどかからないのに、登記料や不動産取得税等を負担してまでも、贈与税の配偶者控除を利用するものか否か等・・・

当たり前のお話のなかに、当たり前でないものを感じたのは、その判断基準となるべき調査や分析の内容とそれから導き出される提案は、非常に有効な質の高いものであろうなと感じました。

おそらく、本人もいっていた経験値からくるものでしょう・・・

全体を総括してみてからでないと、その人その人で、対策の有効性は異なってくるので、何がいいかは全体の財産や状況を把握してからと、おっしゃっていました。

昨日のセミナーは、レジメは基本的なものばかり書かれていて、また、同じ内容と思っていましたが、当たり前のことを当たり前に相続対策しても、その判断基準の違いで大きな結果の差となって表れてくることが分かりました。

出口の対策よりも、まずは、入口の調査、分析がとても重要なことのようです・・・

もう一つのセミナーは、不動産コンサルタントのかたのお話でしたが、やはり、事前の調査が、いかに重要かのお話がありりました。

詳細は、次の機会で紹介させていただきます。