資産防衛のためには、財産の大半を占める不動産の調査や分析は不可欠です・・・

不動産を数多く所有する地主さんも不動産は自宅のみといったかたにも、その調査や分析は重要なこととなります・・・

その調査や分析は、何を知り得るために行いたいのか・・・何を目的とするのか・・・

その第一は、その不動産の現状の価値を知る・・・極論、いくらで売れるものであるのか、換価するとキャッシュは手許にいくら入ってくるのか・・・または、土地活用した場合に毎年毎年いくらの収入が見込めるのか、その収入は売却できる金額に対してどの程度の利回りとなってくるのか等の投資効率を、改めて認識してみることでしょう。

その価値を知ることは、何のために必要となってくるのか・・・

遺産分割で考えた場合、国債等の債権や上場株のように相場が決まっていない不動産は、相続人間でその価値を話あってその価値を協議していきます。

法定相続分での分割を前提としている場合、その不動産の価値の金額如何で、遺産分割で取得できる相続財産が変わってきます。

不動産を取得する相続人は、不動産の価値は低い方を望むでしょうし、それ以外の相続人は不動産の価値は高いことを望むでしょう。

このようなことが、遺産分割が纏まりにくい一つの要因ともなっているようです・・・

不動産は自宅のみといった場合等で、相続財産のうちに占めるその自宅の価値の割合が実に7割や8割を占めるといったようなとき、その自宅は長男に引き継がせる場合、その自宅の価値を算出してその他の相続財産の価値との合計額を見据えて、それぞれの子供への分割を、生前に考えておくべきでしょう・・・

長男には自宅、その自宅は相続財産の実に8割を占めている、子供は他に二男と三男・・・二人合わせた遺留分は1/3・・・
遺言書を遺したとしても遺留分の不足分は、代償分割等で手当てしなければなりません・・・

ここで、その自宅という不動産の価値をいくらで設定して遺留分を考えておくべきか・・・

このようなためにも、不動産の価値を知ってておくことが必要となってきます。

不動産を数多く所有している方の場合は、将来の資産防衛のために、やはり①遺産分割対策、②納税資金対策、③節税対策、等々、優先順位は①から③の順と言われていますが、同時並行的に進めていく必要があります・・・

不動産が数多くあれば、各相続人にそれなりに財産分与は出来ることとなりますので、どのように分けていくかを考えて遺留分を考慮した遺言書を遺して、時には代償分割等の手当てを考えておけば、円満とならずとも円滑な遺産分割で終えることはできるでしょう・・・

その遺産分割対策(争族対策)を考えるには、やはりきちんとした調査に基づく不動産の価値が分かっていたいところです・・・

駅近とロードサイドの商業用施設2つを子供2人にそれぞれ分けるといった場合、一つの商業施設は駅に近く土地の価格が高いことからその他の金融資産等の相続財産は少なめとして一人の子供が貰うこととし、もう1人の子供は駅から離れた土地の価格の低い商業施設であることからその他の金融資産等の相続財産を多く貰うこととした遺言書が遺されていたとします。

実は、その2つの商業施設は、駅に近いものは老朽化していることと駅前シャッター通りの影響も受けて賃料は大幅に下落している、反対に駅から離れたロードサイドの商業施設は車の往来が激しく大いに流行っており賃料は安定している、といった場合、公示価格等の土地の価額だけではその土地の価値を適正にあらわせるものではないでしょう。

商業施設を止めた時点での、キャピタルゲインは駅に近い土地の方が高いかもしれませんが、商業施設として利用している期間のインカムゲインの累計額でそのキャピタルゲインの差額が大きく逆転することも考えられます。

このように、土地の価値は、キャピタルゲインとインカムゲインの両面で将来性をも考慮したうえで算定していくべきでしょう。

その点を怠ると、一見すると平等に考えたはずの遺産分割が、実は、大いに不公平なものとなってしまうかもしれません。

円滑な遺産分割はできるでしょうが、円満にはなりえないかもしれません・・・

また、資産防衛の観点から考えると、土地の価値を公示価格等の値段というもののみで捉えるのではなくて、上段と同様にその活用の状況に拠っての優劣やその将来性を考慮して捉えるべきでしょう・・・

数多くの土地を所有していると当然に、相続税の納税を憂慮しなければなりません。

また、ただの更地で稼げない土地であっても固定資産税等の経費は、毎年かかってくるものですから、土地のリストラ計画も必要となるでしょう・・・稼げない土地は売れるときに売ってその他の稼げる資産に移転していく等・・・以外に本人にとって稼げない土地もその土地の近隣の方にとっては価値のある土地であったりもします。

それで、土地の価値を知るための調査は何・・・といった場合、それは当たり前の調査をするしかないでしょう・・・

都市計画や建築基準法等の法令上の制限を確認する・・・

市街化区域、調整区域、非線引き区域等・・・用途地域、高度地区、特定街区、風致地区等・・・道路制限など・・・

それぞれの土地ごとのかかっている制限の確認が必要です。

道路のセットバックの有無、建てられるもの、建てられないもの、建てられる階数や面積、隣家の火事に備える防火基準、斜線制限による高さの制限等々・・・数え上げたら書ききれなくなってきます。

そして、立地や環境、駅から何分、小学校や中学校まで何分、学区の小中学校の人気(県内一の進学校への進学率の高い公立中学校等)によって価格が変わる場合もあります、そしてスーパーやコンビニ等の商業施設や病院までの距離等々、がその価格に跳ね返ってきます・・・

そして、その土地ごとのその家族にとっての価値も計るべきでしょう・・・

優良な住宅地にある土地、売りに出せば住宅用地としてすぐ売れてしまうほどの人気がある・・・

だけど、住宅は既に所有しているので住宅は必要ない・・・ではその土地に有効活用といった場合、駅から15分も離れた静かな住宅地のため、余り有効活用に適しないといったケースもあるでしょう・・・

他の人にとっては、とても貴重な土地でも本人にとっては売りやすい土地というだけで・・・稼げないといったことがあるわけです。

このような土地は、すぐ売却できるわけですから、子供の住宅用地にあいたいとかいった目的が無い場合は、相続税の納税資金用として青空駐車場としておくのも良いかもしれません・・・

このようにして調査や分析を重ねて、残していきたい土地(自宅や活用)、相続税の納税用とする土地、売れるものならすぐ売却して組み替えたい土地、等に整理して来るべき相続に備えておくべきでしょう。

もちろん、遺産分割のことも考えながらです・・・


そして土地の価値の他の不動産調査の目的は不動産に関連する税金を押さえておくということでしょう・・・

不動産に関連する税金・・・売却すれば個人であれば譲渡所得として所得税、法人であれば法人税が課税されることとなります。

これは、基本的には売買という経済行為がともなって発生するものですから、不動産の代わりに現金が手許に入ってきますので原則、納税の資金には困りません・・・いわゆる担税力があるということです。

それに反して、不動産を所有しているだけでかかってくる税金の代表は固定資産税、そして相続税・・・相続税は家単位でいえば所有しているだけという概念となるのですが個人単位で考えることから親から子に財産が無償で移転したことの対する子供の財産が無償で増えたという事実に課税するもののようです。

この固定資産税や相続税での悩みや問題は税金を納める原資がないといった場合が大いにありえることです・・・

稼げない土地にも、固定資産税や相続税は課税されてきます。

それも、稼げない更地であればあるほど、税金は高く算出されます。

この事実に便乗じてのアパートやマンション建築の営業が盛んにおこなわれています。

アパートやマンションを建てると税金が安くなりますとの営業トークで、新駅の周辺は新築アパートやマンションが目白押しです。

駅から歩10分以内の立地であれば将来の空室リスクは少ないでしょうが、歩10分を超えてくると築10年も超えてくると競争力の低下から空室リスクは高いものとなってくるでしょう・・・

ここで、注意したいのは駅から10分も超える立地のアパート等の建築は、相続税は実際いくらかかってくるのかを確認し、その納税資金ははいかに手当できるかを検証しながら考えるべきでしょう・・・

空室リスクを負ってまでも、アパート建築による相続税の軽減を図るべきであるのか・・・否か・・・を判断すべきでしょう。

もしかしたら、その他の土地の利用区分を工夫した不整形地等の評価で何とか満足いく節税が可能となるということもありえます。

このように、全体的な調査と分析をきちんとおこなったうえで、全体的なバランスを観ながら・・・リスクを伴った事業計画は練っていくべきでしょう・・・

資産防衛のための対策を練っていくうえでは、不動産の調査と分析はやってもやり過ぎるということは無いのではないでしょうか・・・