今回は、前回の続きとしまして相続人としての養子の要件と相続分についてお話させて頂きます。

①養子について
養子は人為的につくられた親子関係です。養子関係は、婚姻と同様に役所への所定の届出により行う縁組によりその効力が発生します。
養子縁組の効果は、縁組の日から養子が養親嫡出子たる身分を取得することとなることです。したがって養親子は、相互に相続権および親族的扶養義務を負います。同時に、養子と養親の血族との間にも親族関係が発生します。さらに養子は養親の氏を称しなければなりません(しかし多くの既婚者である女性のように、結婚により氏が改まった者はその必要はありません。)
但し、次のような要件を満たしていないと、縁組は不成立(無効)になります。
・縁組の意思が合致していること(単なる方便のみでは不可)。
・養親となる者は成年に達しており、かつ養子より年長であること。
・直系卑属でない未成年者を養子にする場合は、家庭裁判所の許可を得ること。
・配偶者のある者が未成年者を養子にする場合は、原則として夫婦が共同して縁組すること。
・配偶者のある者が養子になる場合には、他の配偶者の同意を得ること。
養子縁組の当事者は、協議離婚と同じように、話し合いで離縁することができます。離縁がなされれば、ほぼ従前の関係に戻ります。
なお上記で説明しました『普通養子』の他に、総和62年の民法の改正により『特別養子』制度が創設されています。一言でいえば、実親が育てることのできない赤ん坊を、全くの実子同様に育てようとする人が養子にするためのものです。
したがって、養子は6歳未満の幼児であること、縁組により実親等との法律上の関係は消滅すること、離縁は許さないこと等が原則規定とされています。さらに、戸籍上も一見しただけでは養子であることが分からない措置がとられています。

②相続分
相続分とは、相続財産に対する配分の割合をいいます。
民法は以下のとおり相続分を定めています。これを『法定相続分』といいます。(なお遺言で相続分が指定されているものを『指定相続分』といいます。)ただし、相続人の意見の一致により遺産分割協議が整うのであれば、法定相続分に拘束される必要は全くありません。現実にはほとんどの場合、遺産分割協議書の作成等により、自由な割合で遺産を分割しています。
①配偶者と子(第1順位)が相続人である場合は、相続分は各2分の1
②配偶者と直系尊属(第2順位)が相続人である場合は、配偶者の相続分が3分の2、直系尊属が3分の1。
③配偶者および兄弟姉妹(第3順位)が相続人である場合には、配偶者の相続分が4分の3、兄弟姉妹は4分の1
④子、直系尊属または兄弟姉妹が複数いる場合には、各自の相続分は(年齢、性別にかかわらず)等しいものとする。
⑤ただし、非嫡出子は嫡出子(婚姻関係にある男女間にに出生した子)の法定相続分の2分の1とし、父母の一方のみの兄弟姉妹(半血兄弟)は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
⑥代襲相続人の相続分の合計は、非代襲者(死亡していた相続人等)の受けるべきであった相続分と同じ割合とする。

以上、『養子』と『相続分』についてお話させていただきました。

なお、相続が発生した場合には、先ず、相続人の確定が必要となります。
相続人の確定には被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの全戸籍を集める必要があります。
全戸籍には、除籍(戸籍記載の全員が結婚・死亡・転籍などでいなくなった戸籍)や改製原戸籍(法改正で様式が改められる前の古い戸籍)も含まれます。これは法定相続人の中でも第1順位となる子を確定するためです。離婚した前妻との間に子がいたり、隠し子を認知していたりすれば、現戸籍には記載がなくても、必ず過去の戸籍をさかのぼれば確認が出来るからです。
他にも、預貯金や株式、不動産などの名義書き換えのたびに、金融機関などの手続き先への提出が求められます。
複雑なケースでは、必要なすべての戸籍を取得するのに1カ月以上かかることもありますので、早め早めの対応をお奨めいたします。

次回は『遺産分割』についてのお話をさせていただきます。

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